魔石の時代
第一章
始まりの夜4
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見下ろす街、頬をなでる風、樹の香り。そんな感触が妙にはっきりと残っている。これはひょっとして――
「異境が反応した、か……?」
あの魔石は強烈な思念によって発動する。いわば聖杯と同じだ。俺が生きた聖杯無き新世界でも、奴らは隙をついて似たようなものを放り込んできた。だから、必然的にそれを感知する術には長けていった。その知識と技術は、ほんの一部とはいえ、この街を覆う異境にも活かされている。つまり、強烈な思念に呼応する『何か』を察知できる訳だ。
とはいえ、幸いな事にこの魔石は聖杯と違い『奴ら』の気配がまるで感じられない。もっとも、それ故に感知するのがいくらか難しくなっているとも言えるが――それでも『奴ら』が関わって来ないならそれだけで充分幸いだ。さすがに、今の状態では『奴ら』の相手などできるはずもない。
「探すしかないか……」
ともあれ、異境が発動したというのなら暴走は近いと考えていい。手掛かりなどろくにないが……おそらく持ち主は、なのはと同じかそれより一つ二つ年上の子どもだろう。
(それだけの手がかりで見つけられれば誰も苦労しないな)
呻いた直後の事だった。強烈な魔力が辺りを包み、異境が悲鳴を上げる。
その辺に投げ捨ててあった法衣を引っ掴み、外へ飛び出す。変化は一目瞭然だった。市街地のど真ん中に、巨大な樹が聳え立っている。何の冗談かと思った。まるで夢でみた大樹そのものだったからだ。だが、冗談ではない。樹の位置と、規模からすれば翠屋が巻き込まれていたとしても不思議ではなかった。
「隼の翼よ」
練り上げられた魔力によって、背中に翼が生じる。加速は一瞬だった。瞬く間に樹へと近づく。だが、近づいた後はどうすればいいのか。場所が場所だけに、やみくもに燃やしてしまう訳にも行くまい。本当の標的だけを確実に始末する必要がある。
(核となっているのはどこだ?)
必ずどこかにジュエルシードと、それを発動させた人間がいる。自分に言い聞かせ、心眼で居場所を探る。
(樹の頂上付近か……)
それらしい気配は見つけた。だが、それをどうすればいい。無暗に切り裂いて、中身は無事なのか。真っ先に思ったのはそんな事だった。
(所詮は二流という事か……)
生粋の魔法使いなら、おそらく迷うまい。かつては大魔導士とも呼ばれた身でありながら、そんな甘さは今に至るまでついに消えなかった。だからこそ、かつての自分は大魔導師などと呼ばれる半面、そんな呼ばれ方もされていたらしい。どちらの評価が正しいのか――その答えはひとまず黙殺しながら、最寄りの枝に着地する。取りあえず迎撃の様子はない。というより、積極的な破壊行動は見せていない。
そもそも、この樹から感じる気配は神聖なもの……少なくとも人体に深刻な悪影響を及ぼさないものだ。もっとも、長期的に放置した場合どんな影
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