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その魂に祝福を
魔石の時代
第一章
始まりの夜4
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――少しばかりの仕返しも込めて、告げた。
「俺に出来る事なら構わないが」
 頷く士郎を前に、あるものを差出す。
 それは、相棒が残して行った古びた短剣だった。いや、正しく言うのであれば短刀と言うべきなのだろう。どちらにしろ、かなりの業物だった。ただの武器としても。
「美沙斗が結婚式で使った護身刀だ」
 この短剣の由来を教えてくれ。その問いに、士郎はあっさりと言った。
 何故そんなものを結婚式で使うのか。続けて問いかける。風習の違いだろう。それくらいの見当はついたが。
「この国では守り刀と言って、昔から短刀を邪気や厄災を払うお守りの一種として扱う事があるんだ」
 なるほど、と思う。あの女にはお似合いのお守りだ。もっとも、今の説明を聞く限り、相棒に限った話でもないのだろうが。
「ちなみにだが、短刀であるには裏の理由もある」
 納得する自分を他所に、士郎は続けた。
「自害用だ。貞操を汚されそうになったら、自害して夫の足手まといになるな、という意味も込められている」
 それは何だ。再び問いかけると、士郎は肩をすくめて言った。むしろ、その説明の方が納得がいった。女を巡って殺し合いが発生する事などざらにある。痴情の縺れ、惚れた腫れたに由来する魔物などうんざりするほど相手にしてきた。……もっとも、うんざりするほど相手にしていない魔物というのもいないが。
 なるほど。馬が合う訳だ。魔物退治と必要悪。それが存在定義だと言うなら、この供物が妙に自分に馴染む理由としては充分だ。
 ……そう。この短刀は供物としても見事な業物だった。かつての自分が所有していた供物――まだ取り戻せていないそれらと比較しても、見劣りしないほどに。相棒がそれに気付いていたかどうかは分からないが。
 剣魔女の護剣、とでも名付けるか――ふと思いついた名前を呟きながら、眠っている力を引き出す。
「何だと……?」
 恭也のうめき声が聞こえる。その頃には両手に異形の剣――いや、刀が顕在した。
 刀の魔力に従い、身体を動かす。思った以上に、滑らかに身体が動く。……相棒に扱かれた甲斐があったというものだ。
「この動きは、御神流……?」
 叩き込まれたのは基礎だけだ――告げると、恭也は食いついてきた。
「ふざけるな! 今の動きは基礎なんてもんじゃない!」
 取りあえず、それには答えず士郎に視線を戻し、問いかける。
「いや、違う。元々は実戦で使われた小太刀だったと聞いている。それを研ぎなおし、短刀にしたらしい。かなり古い物のようだな」
 この短刀は、最初から短刀だったのか?――その問いかけに、士郎はこう答えた。
「何故分かったんだ?」
 そうだろうな。その言葉に、今度は士郎が訊いてくる。だが、分からないわけがない。
「気と魂?」
 気と魂が染みついている――そう答える
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