第八章
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第八章
「ほら、ピカソもパリでステーキを食べていたじゃないですか」
「毎日だったね」
「ええ。故郷の味のステーキを」
ピカソはスペイン出身だ。パリにいた頃は毎晩行きつけの店に行ってそこで故郷の味にした分厚いステーキを食べていたのである。
「ですからどうですか?」
「ここはイタリアだし僕はイタリア人だけれど」
思わせぶりな笑みをミショネに向けての言葉だった。
「それでもかい?」
「駄目ですか?」
「いや、いい」
あえてこう言った。
「それでね。じゃあこれで決まりか」
「そういうことですね。じゃあメインはステーキですね」
「うん」
弟子の言葉にこくりと頷いたうえでまた述べた。
「それもスペイン風を」
「わかりました。じゃあ最後は」
あとはデザートだった。
「何にしますか?」
「昨日はフルーツケーキだったし」
「ええ」
「今日は別のものにしようか」
「それで何にしますか?」
師匠に顔を向けて尋ねた。
「何でもありますけれど」
「代わりばんこをするかい?」
「代わりばんことは?」
「だから代わりばんこだよ」
楽しそうに弟子に対して話す。
「デザートをね。どうだい?」
「デザートをですか」
「昨日のお互いのを」
具体的にはこういうことであった。
「交換しよう」
「じゃあ先生が苺のタルトですか」
「そうさ」
笑ってはっきりと答える。
「そして御前が」
「フルーツケーキですね」
「それでどうだ?」
ここまで話してあらためて弟子に問うてきた。
「そういうのも面白いだろう?」
「確かにそうですね」
一応はわかったという顔で頷くミショネだった。
「そういうのも。確かに」
「だからさ。ちょっと考えてみたんだ」
「考えてですか」
「ヒントがあったんだ」
また笑って弟子に告げた。
「種明かしをすればね」
「ヒント?」
「そう」
こくりと頷いて弟子に告げた。
「この店にね」
「このお店にヒントが」
今の言葉はミショネにはわからないものだった。
「あったんですか」
「何だと思う?」
「さあ」
どうしてもわからず首を傾げることしかできなかった。
「どうしてですか?」
「もう一つヒントを出そうか?」
「ええ」
話がわからないまま師匠の言葉に応えた。
「御願いします」
「保育園にもあった」
「保育園っていうと」
やはりこう言われても首を傾げるのだった。
「あそこですか?さっき言った」
「そう、あそこさ」
「やっぱり」
今度の予想は当たった。しかしそれでも今の師匠の謎々には答えることができない。何が何のかさっぱりわからなかった。考えれば考える程だ。
「けれどここと保育園というと」
「全く違うな」
「違うな
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