詠い霞むは月下にて
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聞いとるで。徐晃隊と月達が親しかったってな。泣いてええ。そんだけ大切に想って貰えて、副長達も幸せやろ」
優しくポンポンと頭を叩いてくれた霞さんは、何処か姉のようだと感じる。
でも私達は泣かない。ぐっとお腹に力を入れて、どうにか涙を堪える。詠ちゃんもぐしぐしと袖で涙を拭っていた。
「泣かないわ。副長達が悲しむもん。あいつらはバカだから、私達に笑ってくれって言うのよ」
「自分達が死んだ程度で泣くな、幸せに生きて欲しいから戦ってる、だからどうか、俺達の為には泣かないでくれ……そう言う人たちですから」
一寸、呆気にとられてポカンと口を開けた霞さんであったが、くつくつと苦笑を漏らした。
「クク、バカばっかりやなぁ。ええ奴等のとこに居れたみたいで安心したわ。しっかし月……あんたぁホンマ、ええ王になったやんか」
「……? 私はもう王ではありませんよ?」
疑問をそのまま口にしても、霞さんはそれもそうかと言って流した。
どういう事だろう。私はもう、董卓じゃなくてただの『月』なのに。
「ま、ええわ。とにかく……恋とねねの事に話戻すけど、徐晃の記憶が先やな。当てはあるんか?」
「……人を殺しても戻らなければ、小耳に挟んだ程度の情報を頼りに人を探すか、恋さんが壊れない可能性に掛けるしかないかと」
「人を探すって……記憶を戻せる医者がいるわけじゃなし――――」
「ううん、詠ちゃん、涼州に居た時に聞いた事無い? 神医『華佗』って人の話」
言うと、詠ちゃんはため息を零した。
「胡散臭過ぎて忘れてたわ。五斗米道だっけ? 不治の病も直せるなんて西涼くらいから噂が出た気がするけど……直ぐに消えたじゃない。漢中が発祥地って聞いたから足跡を探しても見つからなかったし」
「うーん、恋が壊れへん可能性も大概やけど、そっちも難しそうやなぁ。まあ、華琳はいろんな才持っとる奴集めたいやろうから、ちょっとは人手出してくれそうではあるか」
「記憶を失う人というのはあまり居ません。普通のお医者さんに見て貰っても治せなかったと彼は言ってました……やはりダメでしょうか?」
「人殺して戻らんくても、軍を率いたら戻るかもしれへん。恋とねねを無理やり入れても、内部でいざこざがあったら華琳の国も乱してまうし、そん時は月と詠が責任取らされて華琳に殺されるから……恋とねねはよっぽど状況が揃うか、戦で捕まえて月が前みたいに時間を掛けて変えて行くかしかあらへんな」
「そうね。それにねねだけが離れたら恋は利用されちゃうだろうし、ねねにだけ伝えられたとしても、近くに居過ぎたねねがいきなり変わると恋が壊れる率が高い。秋斗の経過を見ながら華佗を探して、恋達と戦った場合は二人共を捕まえられるようにするのが最善。ただし……霞は絶対に恋達と一人で相対しちゃダメ。憎し
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