詠い霞むは月下にて
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もないとこ見せたな。ありがと、大分楽になったわ」
「いいえ、こちらこそありがとうございます」
ペコリと頭を下げると、霞さんは口に手を当てて猫のような目になった。
「にひひ、月は相変わらず優しいこっちゃ。……とりあえず話し戻そか。恋とねねについて、詠はどうしたらええと思う?」
鋭い瞳は将のモノ……では無く、友達を助けたい一心から来る優しい色が宿っていた。
話を向けられた詠ちゃんは顎に手を当ててほんの少し悩んだ後、ゆっくりと言葉を紡いでいった。
「劉表が袁家の手助けをした……ってのが難しい所ね。連合の大本である袁家の手助けなんか、憎しみに染まってるなら恋とねねが認めるはずないから、袁家との内通者がいて、そいつが動いたって線が一番有力。劉表は病床に伏してるらしいから内部も荒れてるって聞くし……」
ぶつぶつと予想を組み立てて行く詠ちゃんは軍師に戻っていた。
やっぱり詠ちゃんは軍師をしてる方が生き生きしてる気がする。侍女をしている時も可愛いけど。
「じゃあ内部の再掌握、もしくは袁家の内通者による掻き乱しで荊州は荒れそうだね。しばらくは恋さん達に近付け無さそう。あの優しい人には、私が直接会わないと変わらないから機を待った方がいいかも」
「なんか他にも問題ありそうな言い方やな、月」
驚いた霞さんを見て、ほんの少し笑みが零れた。
詠ちゃんとは前からだけど、彼や雛里ちゃんとの関わり合いで思考訓練を積んできたから、私も色々と頭が回るようになった。
「どうにか恋さんと会えたとしましょう。こちらに来てくれたともします。でも絶望の底に堕ちた恋さんは、前のように無感情な怪物に戻ってしまっているのは確実です。会ってすぐに優しい人に戻れたとしても、何もかも感情を抑え付ける事は出来ないでしょう。徐々に溶かしていかないと壊れてしまいます……が、そんな中で記憶を失った彼に出会うとどうなるでしょうか?」
はっと息を呑む音が二つ。二人共分かってくれたようだ。
恋さんを変えたのは私。想いを繋ぐ人にしてしまったのは私。だから恋さんは、同じように想いを繋ぐ彼への怒りを抑え付けられない。
これは確信。
だって……恋さんは華雄さんの事、凄く大切に思ってたから。
殺した相手の想いを繋げと教えてしまった私のせいで、恋さんは『想いを繋がず逃げた』と認識して、彼を、私が教えたからこそ私でさえ止められずに殺してしまう。
そして何より、恋さんは彼の事を怖がってた。何故かは分からないけどあの恋さんが怖がるくらいだから、危険と判断してか、それとも自分を守る為か、排除しようとするだろう。
無理やり止めたら恋さんの心が壊れる。ただでさえ、私達を苦しめた連合側に所属するのに抑え付けるであろう激情と、誰も並ぶ事の無い飛将軍が持って
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