天舞う竜の祝子
[1/9]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
それは、7年前の事だった。
“魔法都市”フルールの名家カトレーン家と特殊な繋がりを持つルーナサー家。
一族全員が召喚系の魔法を使うこの家の娘―――――サルディアは、家の裏にある森を歩いていた。
(嫌になっちゃうな。そりゃルーナサーの子はカトレーンの人の従者になるのが一生の仕事だけど……嫌だなぁ)
さくさく…と足を進める。
木々の間から光が零れ、サルディアのツインテールを照らす。
はぁ、と溜息をついて、その辺にあった岩に腰掛けた。
(ここに来るのも最後だろうなぁ…私はこれから主の言う通りに生きて行かなきゃいけないんだし…それに、主になる人はマグノリアのギルドにいるっていうし……)
憂鬱な気分に、もう1つ溜息。
いくら溜息をついても、この憂鬱な気分は変わらないだろう。
幼い頃から魔法に関する知識を得る事が何より好きだったサルディアにとって、魔導士ギルドは夢のような場所だ。
人の数だけ魔法があって、魔法の数だけ種類があって、同じ魔法でも使う人によって変わる――――――そんな光景を自分の目で見れるなんて、一生で1番嬉しいかもしれない。
が、その光景を見るという事は主に一生仕えるという事。
誰かに仕えてまで、夢見た景色を見る気にはなれなかった。
(何で私なんだろ、次はお母さんの番のハズなのに……私、強い訳でもないし、契約してるのだってシレアだけだし……)
彼女が使えるのは、竜の語り部。
竜―――――正確には飛竜の召喚を得意とする魔法だ。
シレアというのは、魔法を習得した際に両親が契約させた飛竜の子供。
ぬいぐるみのような大きさでふわふわした羽が生えており、可愛らしいには可愛らしいのだが、戦闘には向いていない。
「はあ……」
肩を落とし、俯いて溜息をつく。
いつかは回って来る順番だ。それがただ単に早かっただけ。
そう考えても見るが、やはり憂鬱なモノは憂鬱で。
まだ心の準備だって出来ていないし、突然マグノリアに行けと言われても戸惑うだけだ。
しかも、言われたのは昨日の夜。それで今日マグノリアに行けと言うのだからあまりにも言うのが遅すぎる。
「もう嫌だ……」
誰にも聞こえないような小さな声で呟く。
俯いて、もう1度溜息をついた―――――瞬間。
「ガルルルル……」
「!」
獣が唸るような声が聞こえた。
反射的に岩から降りて振り返ると、メキメキ…と枝が折れるような音が響く。
重々しい足音に、近づく唸り声。枝の折れる音。
思わずサルディアは1歩下がった。
「え…な、何で……」
声が震える。
木々の間から、赤い光が2つ見えた。
それが目であると気づいた時には、唸り声の正体は既にサルディアの前
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ