天舞う竜の祝子
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。
普段の彼女からは考えられないほどに鋭い眼光でフラウを見据えている。
でも、それだけじゃない。
「グルル……ガアアアアアアアアアッ!」
低く、ビリビリと空気を震わせる雄叫び。
鮮血を流し込んだように赤い瞳に、光を吸収してしまいそうな黒い鱗。
僅かに開いた口からは鋭い牙が覗き、大きな翼がどこか窮屈そうに広がっている。
尻尾が左右に動く度に風が起こり、サルディアのツインテールを揺らしていた。
力強くその場に存在する飛竜に目を向け、サルディアは微笑む。
「……お願いね、アイゼンフロウ」
「ガアアアアアアッ!」
飛竜の名は―――――アイゼンフロウ。
“一時的な死”を経験し、サルディアのグレード上昇とその願いに応えて復活したクエレフォーン。
その赤い瞳が、主の敵を捉える。
「っ…召喚――――――輝きの投曲芸!」
雄叫びと先ほどまでなかった威圧感に怯みかけながらも、フラウは魔法陣を展開させる。
魔法陣から放たれたのは、眩いまでの光に包まれたピンやボールだった。
が、その程度でサルディアは怯まない。
「アイゼンフロウ」
「アアアアアアアアアッ!」
小さい呟きにアイゼンフロウは答えると、開いた口の奥に黒い光が見えた。
その光は瞬きをする間に力を増し―――――咆哮となり、放たれる。
黒い闇の咆哮はピンやボールを容赦なく包み、纏う光を奪い去り、地に落とす。
「くっ……だったら!召喚―――――」
「同時召喚・天舞う竜の翼舞」
フラウの手に魔法陣が展開しかける。
が、それを封じる手をサルディアは既に打っていた。
魔法陣から無数の羽が飛び散り、フラウを囲むように円を描いて舞う。
他の羽は手錠のようにフラウの腕を拘束し、体の自由を奪っていく。
「あなたは私から奪ってはいけないモノを奪いかけた」
「ちょっ…何なのよ、コレ……!」
右手をフラウの方に向けたまま、サルディアが呟く。
普段の温和な彼女とは全く違う、怒りに燃える瞳を向ける。
フラウは拘束を解こうともがくが、羽が離れたと思えば別の羽が拘束し、なかなか解けない。
「私ね、人にはそれぞれ大切なモノが1つはあると思うの。大切で大切で、無くすなんて考えたくないくらいに大事なモノが」
ゆっくりと、サルディアの右手の指が動く。
指を鳴らす体勢に入る。
「そして――――――」
パチン、と。
静かな空間に、サルディアが指を鳴らす音だけが響いた。
桃色のツインテールをはためかせ、僅かな微笑みを浮かべて、告げる。
「人は、大切なモノの為なら、幾らだって残酷になれると思うの」
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