天舞う竜の祝子
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惑ったように瞳を揺らした。
目に映るのは、頭を下げるサルディア。
そこにいたから何気なく声を掛け、湖に落ちた彼女をなんとなく助け、自分の住処に連れてきて服と髪を乾かそうとしただけの少女。
お互いが知っているのはお互いの名前くらいなもので、このサルディアという少女が何を好んでいて何を嫌っているのかも、彼女が扱う魔法が何なのかも、何も知らない。
―――――――――だけど。
「ルアアアッ!」
アイゼンフロウは少し迷ったが、すぐに頭を下げるサルディアを翼で包んだ。
目を見開いて顔を上げるサルディアに、アイゼンフロウは目を細める。
しばらく呆然としていたサルディアだったが―――――すぐに、花が咲いたような笑みを浮かべた。
「来て、くれるの?」
「ガウッ」
返事に、サルディアは腕を伸ばす。
アイゼンフロウに抱き着くと、サルディアは黒い鱗で覆われた体に頬を摺り寄せた。
顔を上げれば、笑うように目を細めるアイゼンフロウ。
「うん……一緒に行こう。ずっと一緒だよ、アイゼンフロウ」
―――――――その願いは、叶わなかった。
ずっと一緒、なんて不可能だという事を、サルディアは唐突に突きつけられる。
腕の中には、赤い光を帯びる黒い水晶。
先ほどまでアイゼンフロウだった―――――あの鱗のように艶めく、黒水晶。
「あと30秒……ふふっ、黒い飛竜も貴女も、あと30秒の命ね。30秒後…いいえ、あと20秒くらいかしら。楽しみだわぁ」
艶やかに微笑む“処女宮”フラウ。
サルディアは、黒水晶を抱えたまま動かない。
その様子を見下ろし、フラウは眉を顰めた。
(飛竜が死んだ事で精神的に参ってるのかしら?随分殺しやすそうで退屈だわ)
ふあぁ……と欠伸を1つ。
潤んだ瞳でフラウはサルディアを見つめ――――――目を、見開いた。
「力を、貸して……召喚…アイゼンフロウ……」
虚ろな瞳で、サルディアは呟いていた。
最初は驚いたフラウだったが、すぐに調子を取り戻す。
クスッと微笑み、口元に手を当てる。
「あら、死んだ召喚者は呼んでも反応しないわよ?そのくらい、常識でしょう?」
そう、1度水晶になってしまった召喚者達は、もう2度と元には戻らない。
例外として、“召喚者限定蘇生術”を使えば話は別だが、使えるのもまた召喚者のみであり、使える召喚者はとても少ない為、サルディアもフラウも契約出来ていない。
勿論、サルディアはそれを知っている。
「…力を貸して…召、喚……アイ、ゼン…フロウ…」
「全くもぅ、いつまで死んだ召喚者に縋るつもりなの?貴女は負けた、認めてしまえば早いじゃない」
サルディアには、他にも召喚者がいる。
飛竜
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