天舞う竜の祝子
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にいた。
「……飛竜…?」
黒い鱗に、銀色の模様。
鮮血を流し込んだように赤い目に、巨大な翼。
サルディアの何倍も大きな飛竜が、そこにいた。
黒い飛竜が、口を開く。
「ガアアアアアアアアアッ!」
咆哮。
ビリビリと空気を震わせ、木を揺らし、葉を飛ばし、湖を波立たせる。
サルディアは耳を塞いだが、それでも少しマシになった程度であり、飛竜の声が真っ直ぐに聞こえていた。
「ひ…ひあっ……」
僅かに開いた口から、声にならない悲鳴が零れる。
1歩、また1歩と後ずさると、飛竜は重い足音を響かせて1歩近づく。
(な、何で来るのっ……!?)
こちらとしては逃げたい。全速力で逃げてしまいたい。
が、飛竜の大きい体が道を塞いでいるし、後ろは湖だし、下手に走って迷子になったら困るし…と逃げられない理由だけがサルディアの頭の中に浮かんでいく。
「ガゥル…」
「こ…来ないで……」
近づかれ、下がる。
両手を向け必死に抵抗するが、飛竜には通じていないのかもう1歩。
サルディアは震える足でもう1歩下がり―――――
「ルガアッ!」
「え?」
ぐらり、と。
体が後ろに傾いた。
脹脛辺りが濡れるのに気づき、サルディアは思い出す。
先ほど辺りを確かめ逃げ道はないと悟った時―――――後ろには何があると言った?
(湖……っ!?)
気づいた時には時既に遅し。
バシャン!と音を立て、サルディアは湖へと、落ちた。
(ど…どうしよう…)
必死に手を伸ばしながら、サルディアは考える。
水面の光に手を伸ばすが、掴むのは水ばかり。
(私、泳げないし…そもそも沈みそうな時どうすればいいか、なんて誰も教えてくれなかったしっ……)
そう。
何よりも問題なのは、サルディアがカナヅチだという事だ。
水に浮く、という初歩的な事も当然のように出来ず、水に顔をつけるのだって5秒が限度。
ただ入るだけ、なら出来るが、こんな状況でどうにかする事は出来ない。
(とり、あえず…呼吸……っ)
陸上でするように鼻で呼吸してみる。
が、当然鼻の中に水が入り、ツンとするような痛みに咳き込む。
その拍子に、口の中に僅かにあった空気も、ブクリと大きめの泡になって消えた。
(!マズ…っ)
消えた泡に目を向け、目を見開く。
水に浮く事さえ出来ないサルディアに、呼吸法は残されていなかった。
浮き上がろうと腕をバタバタ動かしてみるが、結果的には変わらない。
水面の光が、そんなサルディアを嘲笑うようにゆらゆらと揺れる。
(…もう……ダ、メ…
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