暁 〜小説投稿サイト〜
Element Magic Trinity
天舞う竜の祝子
[2/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
にいた。

「……飛竜(ワイバーン)…?」

黒い鱗に、銀色の模様。
鮮血を流し込んだように赤い目に、巨大な翼。
サルディアの何倍も大きな飛竜(ワイバーン)が、そこにいた。
黒い飛竜(ワイバーン)が、口を開く。



「ガアアアアアアアアアッ!」



咆哮。
ビリビリと空気を震わせ、木を揺らし、葉を飛ばし、湖を波立たせる。
サルディアは耳を塞いだが、それでも少しマシになった程度であり、飛竜(ワイバーン)の声が真っ直ぐに聞こえていた。

「ひ…ひあっ……」

僅かに開いた口から、声にならない悲鳴が零れる。
1歩、また1歩と後ずさると、飛竜(ワイバーン)は重い足音を響かせて1歩近づく。

(な、何で来るのっ……!?)

こちらとしては逃げたい。全速力で逃げてしまいたい。
が、飛竜(ワイバーン)の大きい体が道を塞いでいるし、後ろは湖だし、下手に走って迷子になったら困るし…と逃げられない理由だけがサルディアの頭の中に浮かんでいく。

「ガゥル…」
「こ…来ないで……」

近づかれ、下がる。
両手を向け必死に抵抗するが、飛竜(ワイバーン)には通じていないのかもう1歩。
サルディアは震える足でもう1歩下がり―――――

「ルガアッ!」
「え?」

ぐらり、と。
体が後ろに傾いた。
脹脛辺りが濡れるのに気づき、サルディアは思い出す。
先ほど辺りを確かめ逃げ道はないと悟った時―――――後ろには何があると言った?

(湖……っ!?)

気づいた時には時既に遅し。
バシャン!と音を立て、サルディアは湖へと、落ちた。







(ど…どうしよう…)

必死に手を伸ばしながら、サルディアは考える。
水面の光に手を伸ばすが、掴むのは水ばかり。

(私、泳げないし…そもそも沈みそうな時どうすればいいか、なんて誰も教えてくれなかったしっ……)

そう。
何よりも問題なのは、サルディアがカナヅチだという事だ。
水に浮く、という初歩的な事も当然のように出来ず、水に顔をつけるのだって5秒が限度。
ただ入るだけ、なら出来るが、こんな状況でどうにかする事は出来ない。

(とり、あえず…呼吸……っ)

陸上でするように鼻で呼吸してみる。
が、当然鼻の中に水が入り、ツンとするような痛みに咳き込む。
その拍子に、口の中に僅かにあった空気も、ブクリと大きめの泡になって消えた。

(!マズ…っ)

消えた泡に目を向け、目を見開く。
水に浮く事さえ出来ないサルディアに、呼吸法は残されていなかった。
浮き上がろうと腕をバタバタ動かしてみるが、結果的には変わらない。
水面の光が、そんなサルディアを嘲笑うようにゆらゆらと揺れる。

(…もう……ダ、メ…
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ