第七章
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第七章
「僕達寄付で来ました」
「寄付ですか」
「はい、教会への」
黙ってしまった師匠に代わって言うのである。
「それで来たんですけれど」
「そうだったのですか」
「ええ。ですが」
「ですが?」
「いえ」
また言葉を自分で遮った。
「何でもありませんので」
「そうですか」
「失礼」
そして丁寧に謝った。
「どうも調子が悪くて」
「はあ」
「とにかくですね」
少し戸惑った調子で彼女に述べた。
「寄付を。神父様にお渡しして頂ければ」
「わかりました」
保育士の彼女はにこりと笑って彼に応えた。
「それでは必ず」
「はい、御願いします」
ここでジョバンニはやっとにこりと笑うことができた。
「それだけです」
「はい」
それだけ告げると彼は戻ろうとした。ミショネに言葉をかける。
「では帰るとするか」
「え、ええ」
ミショネは少し戸惑いながら師匠に応えた。彼が戸惑っている理由は他でもない自分の師匠の戸惑いを見たからに他ならない。
「わかりました」
「ではそういうことで」
「わかりました」
保育士はにこりと笑って彼に応える。その顔がまた清楚で晴れやかなものだった。子供の手を取りまさに聖女のそれになっていた。
「ではまた」
「はい、また」
ジョバンニは一礼して彼女に背を向けた。そのうえでミショネを連れて立ち去る。ミショネはそんな彼について歩いていたが教会を出たところで師匠に問うた。
「あの、先生」
「どうしたんだ?」
「どうしたもないですよ」
不審なものを見る目で彼に言葉を返した。
「さっきの態度は」
「おかしいと思ったのかい?」
「思わない筈がないですよ」
こう答えるしかなかった。
「あんなのを見たら」
「あんなのをかい」
「普段の先生とは全然違うじゃないですか」
こうも言うのだった。
「どうしたんですか?本当に」
「まあ暫く歩こう」
弟子に直接答えずにこう言ってきた。
「暫くな」
「歩くって」
「それで時間になったら」
「!?」
師匠の今の言葉の意味がわからなかった。思わず首を捻ってしまった。
「時間になったらって」
「あの店に行こう」
「あの店!?」
「昨日行ったな」
前を見たまま弟子に述べる。弟子の方は見ていない。
「あの店だ」
「あの酒場ですか」
「それはいいかい?」
「ええ、まあ」
話が全く読めないまま師匠に答えた。
「それは別に」
「ならいい」
弟子の言葉に頷くがやはり前を見たままだった。
「それならな」
「いいんですか」
「とにかくだ」
またジョバンニは行った。
「あの店に行こう」
「わかりました」
「それだけだ。では歩くか」
「はい」
何が何なのかわからな
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