”狩人”フリアグネ編
十四章 「決戦」
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ある。
――封絶が張られていないのだ。
結界内の状況を外部に洩らさない為の予防策と、事後処理の効率化、これが俺の封絶の認識だ。色々と間違っているかもしれないが、大まかに有っているなら問題はないだろう。
例えば結界内の被害や騒音なんていう、明らかな違和感を外の人間に知らせない為の結界は俺もいくつか知っている。いつだったか遠坂に追い回された時、同種の結界の被害にあった。
周りの人間を巻き込まないのと神秘の陰徳ってのが魔術師の常識だしな。
だけどそれは察知される危険がある時だけだ。いかに魔術師といえど貴重な魔力を割くってのは抵抗があるもので、例えば人里離れた郊外の森の城だったり、夜の人の気配のない交差点のような場所だったらわざわざ結界を張る必要もない。
つまり、こんな廃ビルの屋上遊園地の廃墟なんかだったら一般人の目もない為、結界を張る必要はないのだ。
だから封絶を張っていないのだと俺は思っていた。
だが、もしもだ。封絶を張っていない理由が他にあるとすれば。例えば、ハンドベルの音を街中に響き渡らせる必要があるのならば。
――俺たちはとんでもない罠にかかっていることになる。
無論、確証はない。奴に聞いたところで答える訳もないだろう。しかし、確率はゼロではないのだ。
――ここはカマをかけてみるか。
「いつまでそのベルを鳴らしてるんだ? もう燐子はいないだろ」
俺の言葉など聞こえていないのか、シャナを見据えながらベルを鳴らし続けるフリアグネ。
「それとも、何か理由があるのか? 例えば、街中にベルの音を響かせたい、とか。この屋上には、なぜか封絶も張られていないしな――っ!?」
構わず言い続ける……ことは出来なかった。フリアグネがこちらを見てきたからだ。
それもただの眼ではない。何の感情もこもっていない、無機質の冷たい瞳だった。
そしてゆっくりとその口が動く。
「―――――」
ただ一言、それだけだった。今まで俺の言葉など聞こえてもいないようだったフリアグネが発した一言。口の動きだけで発声もされていなかったが、いままでのベルの音など比べものにならないほど強く心臓を、いや俺という存在そのものが恐怖たらしめられたかのように感じさせられていた。
――――殺される。
強烈な戦慄。静かだが恐ろしい程の殺気。多少、こういった状況には経験があると自負する俺だったが、そんな心持がただの慢心だったと感じさせられるかのよう。
奴のあの反応、俺の予想は残念にも的中していたということだろう。カマをかけただけだったが、事実と分かったなら、急いでなんとかしなければならない。
だが本能的に体が強張ってしまう。あまりの恐怖に、体がまるで石像と化したかのように感じられた。
キ ヅ イ タ ナ
さっきの声に
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