暁 〜小説投稿サイト〜
炎髪灼眼の討ち手と錬鉄の魔術師
”狩人”フリアグネ編
十四章 「決戦」
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ナはビルの対極の地点に飛ばされてしまっていた。
 その中間地点、即ちビルの中心に奴は移動してきた訳だ。
「この戦いに勝って、都喰らいを成功させる。そして二人で生きるんだ……」
 涙に濡れる顔を右手の手袋で拭いながら、リィン、とフリアグネはハンドベルを鳴らす。
 再び、ゾクリとした自分自身の存在の揺らぎ。
「……リンリンと鳴らしまくりやがって、その音は心臓に悪いんだ」
 ゆっくりと、立ち上がりながらフリアグネに文句を言ってやる。
 爆破するマネキンがいないと分かっていても、いちいち身体が警戒を促すのか鼓動が乱れてしまう。
 まるで心臓の拍動を無理やり変えられているようだ。
「そうだよ、マリアンヌ。二人で永遠に一緒にいるんだ!」
 居なくなった人形に言っているのか、あるいは自分を鼓舞しているのか。俺の文句など耳にも入っていない様子で、フリアグネは叫び続けていた。
 ベルを持つ左手は相変わらず、一定のリズムで音色を鳴らす。
「第一、もうマネキンは品切れだろ。いつまでベルを鳴らしてやがる」
 干将はあの爆発で何処かに飛ばされてしまった。だが、最後まで手を離さなかった莫耶を右手で強く握り直す。
 これが残された最後の武器だ。次の投影は、おそらく間に合わない。
 シャナは、ダメージが大きい。それを裏付けるかのごとく、先程から一言も言葉を発していない。
 あの爆発の中、無事だっただけでも奇跡的なのだ。後は、俺がやるしかない。
 正直な所、魔力もそうは残っていないし、身体だって怪我のない場所を探す方が大変なくらいだ。
 だが、そんな事がどうでもいいくらいに、俺はただあのハンドベルを止めたかった。
 無理やり拍動を変えられかけている心臓は、もはやロクにポンプの働きをしていない。
 このままだと魔力よりも体力よりも先に、この身体が不自然な拍動に負けてしまう。
 いや、それは気のせいだ。俺の心臓はとっくに鼓動を止め、宝具がその役を担っている。拍動と感じるのは、俺の残り火の鼓動なのだ。
 身体機能など、擬似的な物に過ぎない。誰でもなく、この俺の身体自体がそれを教えてくれている気がする。
 そんな俺を無視するように、再度、鳴り響くベルの音。
 正直な所、息苦しくもなってきたがそれを無視して深く深呼吸をする。といっても、ほとんど空気を吸えておらず、たった一呼吸分の酸素しか得られない。
 爆発が故の空気の不足、加えて謎の心臓の不調で上手く回らない頭が、ゆっくりと再稼働を始める
 そもそも、何処からかおかしくはあったのだ。実のところ、この戦闘が始まって以来ずっと感じていた違和感があった。それが一つ一つ纏まりだしていく。
 もともとフリアグネは自分から動くタイプではない。とはいえ、今回は動かなさ過ぎではないだろうか。
 さっきの人形の自
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