四十五話 月の軌跡 前編
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、月の都に新たな住人達が生まれたのだった。
一つは仮説であった不老長寿が実証された事。それと同時に発生した弊害。
五十年を過ぎた頃には不老は実証されていた。自らの老いが来ない事を人々は驚きそして喜んだ、まるで夢のようだと!そしてそれが夢では無いと。
しかし彼等に発生した弊害は深刻でもあった。
出生率の激減。移住の祭に妊娠していた者達以外での出生率が皆無になったのだ。百年を過ぎた頃には出生率はゼロである。
永琳や他の科学者の説によれば『出生率は危機意識に左右される。生物として子孫を残すというプログラムともいえるものが生物として最大の天敵である“死”に脅かされなくなった為“子を残す”という機能が麻痺、もしくは消失したのではないか』との事である。
真相は未だに解明はされていないが人工授精すら成功しないという事実はその説を肯定するしかないと人々に認識させていた。
月の都の中央部に建つ高層のビル、そこは旧王宮と同じく政治の中心地となっている。そのビルの上階にある一室に数人の人物が集まっていた。
議場の一つだと思われるその部屋の議長席に劉禅が、その左右に伊邪那岐と伊邪那美が腰掛けそして対面の席には永琳が腰掛けていた。
その場の空気は異常に重く入室してから誰一人として口を開いてはいなかった。その沈黙を破ったのは劉禅。
「……八意君……此処に呼ばれた理由は分かっているな」
「さぁ私には全く理由が思い当たりません」
「八意!!」
劉禅の問いに首を傾げてそう返した永琳に伊邪那岐が声を荒げるがそれを劉禅が手で制した。部屋に再び沈黙が訪れるが伊邪那美が溜息を一つ吐くと机に設置されているコンソールを操作し議場の中央にホログラムの映像を映し出す。
ホログラムには個人の資料と思われる写真画像と細かい文章が並び、それと同じ様な映像が次々と表示される。合計で十五人分。
「……八意……彼等は貴方の研究に関わったと思われる人物です。そして……彼等全員が現在行方不明という事は知っていますね?」
伊邪那美は鋭い目付きで永琳を射抜くが当の永琳は涼しげな表情でそれを受け流している。そんな永琳に今度は伊邪那岐が問いかける。
「とぼけても無駄だぞ八意、まだ我々の一部にしか伝えていないが……何故こんな事をした?」
「必要だったから、それ以外の理由がいりますか?」
伊邪那岐の問いにあっさりと永琳は答えた、いや最初から答えても問題無かったのだろう。
永琳が行った研究、実験は『世界干渉』と『人体実験』の二つ。
あの日から永琳が研究し続けているのは“失った存在『七枷 虚空』を再生する”というものだった。
最初に行おうとしたのは死者蘇生だったがそれはすぐに頓挫した。理由は蘇
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