第三話 四
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
は彼女でも無理だった。
今までお姉ちゃんのような存在が居なかったアリスには、結月がそのお姉ちゃんに近い存在で、ずっとこれまで慕っていたのだ。
数日前までは自分を可愛がって、毎日愛を持って育ててくれた父がそのアリスのお姉ちゃんである結月を殺そうとしている。
結月も、自分の父を殺そうとしているのだ。
「アリス…… 分かった」
「……え?」
ナナシはアリスに近づくと、彼女の首をほんの少し噛む。
「あっ…… うっ……」
アリスはナナシに噛まれた瞬間、驚いた声を一瞬だけ上げて、すぐに倒れてしまった。
彼は彼女を傷つけないように気絶させると、アリスを一度結月にしたように口で咥えた。
「…… ナナシ、彼女を…… 必ず生かして! もう、私はもど……れないから」
「勿論だ
「あり……がとう。これで、安心して……」
結月は途切れ途切れに話し、やがて、口を閉ざす。
そして、突然唸り声を上げて、健吾に突撃する。
「シャアアアアアアアアア!!」
健吾は相手の突如とした攻撃にも全く動じず、右腕の刃を振って、彼女を切り殺そうとした。
だが、結月は彼の斬撃を伏せて躱し、鋭利な爪で逆に反撃する。
健吾はピストルを彼女の爪に狙いを素早く定め、二発発砲し、迫り来る爪の軌道を逸した。
ナナシは戦闘に入った二人から逃れる為、コンビニエンスストアーから飛び出す。
その時、一瞬だけ、結月の顔を見る。
素敵な笑顔を持っていた彼女の顔は、最早原型を留めておらず、目を塞ぎ、大きな牙だけを剥き出しにした化け物になっていた。
ナナシは彼女を見て、何を思ったか分からない。ただ、彼はもう二人に背中を向けてとにかく遠くへ走ったのだった。
月が現れ、辺りを暗闇覆う夜中。
ナナシは比較的人間の暮らす大きな都市『ティアティラ』に近い、小さな村にたどり着いた。
そこの鍵の掛かっていない、比較的崩れていない一軒家を見つけると、そこへ気絶したアリスを咥えて中に入る。
そして、手近にあったソファーにアリスをそっと寝かせた。
アリス、悲しんでいたな…… 一体自分の胸にあるこのモヤモヤしたもの…… 一体これは何なのか分からない。結月を助けれなかったその時に、何故かこの何ともしれない感覚が生まれた。
これは一体何だ?
ナナシは不可思議な現象に、首を傾げる。理性を手に入れ、知恵を手に入れた彼でも。その正体はサッパリ分からなかった。
特殊なデセスポワールを喰らえばまた記憶が手に入るのだが……
多分だが、この感覚はその埋もれて無くした記憶に関係があるかもしれない。
「特殊なデセスポワール…… 結月…… あのタイプは間違いなくそうだろう」
彼が結論したのは、結月
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ