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《sword art online》 ~クリスタルソウル~
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それは僕がかつて見た中で最も美しい少女だった。
闇より尚暗い漆黒に染まった草原に、彼女は流星のように現れた。水晶の一片を思わせる綺麗な横顔。月明かりを纏った銀の髪。頼りない輪郭を包む真っ白な服に、一瞬見えたグレーの瞳が印象的な少女だ。
少女は亜人型モンスター・コボルトの前に立ちはだかった。コボルトの狼そっくりな顔が憎々しげに歪み、注意がそちらへ逸れる。今まさに殺されようとしていた僕は、少女の出現により命を救われた形になった。
「私がやる」
高く澄んだ声だ。僕は前後の状況も忘れて、呆けたように少女を見つめてしまう。鋭角的な形状のガントレットにレギンス。右手には鍛えらえれた一振りの剣。なにもかも暗闇に沈む中で、彼女は銀の輝きを四方にまき散らしていた。
白い影が突進し、敵と切り結ぶ。火花が散った。
怯んだコボルトは大きく後退し、僕への追撃を諦めざるを得なくなった。
速い。
一連の動作から、彼女がかなり戦闘慣れしたプレイヤーであることが分かった。
しかし、コボルトは強敵だ。
その強さは、これまでの獣や植物型のモンスターとは一線を画する。多彩な攻撃はAIの指令のもと適切に繰り出され、単純な戦闘に慣れたプレイヤーを圧倒する。加えて基本性能事態もかなり高い。本来ならもっと先のエリアに出現するモンスターだ。正直、二人がかりでも勝てる気がしなかった。
「ダメだよ・・・・・・早く逃げて」
僕の口から、そんな言葉がこぼれた。僕は、この見知らぬ少女に死んで欲しくなかった。僕に勝算はない。しかし、多少の時間を稼ぐことは可能だった。どうせ、彼女がいなかったら今頃はなかった命だ。道連れを覚悟で挑めば、あるいは少女を離脱させることができるかもしれない。震える手で剣を握りしめた。
だが、彼女は逃げなかった。
まるでそうすることが当然、とばかりに敵と相対している。凛とした佇まいは揺らがない。
守られるだけの僕は、唇を噛んだ。
ぴん、と張り詰めた緊張感。
それを壊したのはコボルトのカトラスだった。突進し、振り上げられた刃がぎらりと凶暴な光を放つ。素人目にも分かるクリティカルコース。下手をすれば一撃でHPが全損しかねない。
HPの全損。それは唯一無二のオリジナルであり、バックアップのない僕らプレイヤーにとって最も恐るべき事柄だ。HPがなくなれば最後、システムによるデリートを逃れることができない。つまり死ぬ。僕は思わず、少女のアバターが消滅する様を幻視してしまった。
だが、驚いたことに、少女は致死の攻撃を難なく受け流した。素早く剣をくるりと半回転させ、斬撃の軌道を弾いたのだ。無駄のない洗練された動きだ。
たたらを踏んだコボルトの体が少女と肉薄する。これではお互いに剣
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