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《sword art online》 ~クリスタルソウル~
プロローグ
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れになった首と胴体は、落下の途中で不自然に停止し、ガラスの砕けるような爆音と共に砕け散った。これが死だ。プレイヤーもモンスターも、HPがなくなれば等しくポリゴン片となって消滅する。この世界から、永久に。

 少女が来てくれなければ、ああなっていたのは間違いなく自分だ。情けなくも僕は安堵し、その場で腰を抜かすのを必死でこらえているような有様だった。

 軽やかに大地へと降り立った少女は、そんな僕を不思議そうに眺めている。正面きって相対してみると、僕は改めてその端正な顔立ちに圧倒されてしまった。クラスで一番可愛いとか、ありきたりな表現ではとても形容することができない。神様というやつが実際にいて、全知全能の力を全て人に注ぎ込んだら、きっと彼女のような仕上がりになるのだろう。それほどまでに、浮世離れした美貌だった。

「ありがとう、ございます。その、助けてくれて」

 かすれた声が出た。
 あまりにも現実味がなくて、本当にプレイヤーなのかと思った。実はここはもう死後の世界で、彼女の正体は僕を迎えに来てくれた女神、あるいは死神である。そんな空想が頭をちらっと過った。

「うん、無事で良かった」

 しかし所詮は空想に過ぎず、少女はごく普通に僕と会話した。背中に翼が生えているわけでも、大鎌を持っているわけでもない。視界に割り込んでくるアイコンも彼女がプレイヤーであることを示している。

 彼女は無傷で戦闘に勝ったくせに、ちょっと思いつめたような表情をしていた。無理もない。いきなりこんなデスゲームに巻き込まれたのだ。プレイヤーの多くは憔悴しきっている。僕自身、きっとひどい顔をしているはずだから。

「強いんですね。びっくりしました」

 僕は賞賛を込めて言った。
 あれだけのプレイヤースキルを持っているなら、迷宮区でも問題なく戦える。もしかしたら攻略組のプレイヤーなのかもしれない。
 攻略組とは、文字通り未開のエリアを攻略していくプレイヤー達の総称だ。常に死亡率の高い最前線で戦う攻略組は、自然と高レベルの精鋭達で構成される。彼女が攻略組だとするならば、あの強さにも合点がいく。残る疑問はなぜ、こんな低レベルのエリアに彼女のようなプレイヤーが現れたか、だ。

「慣れてるの、それだけだよ」

 下界に舞い降りた戦女神は、しかし、なぜか僕の褒め言葉に顔を伏せた。
 意外な反応に僕はちょっと首をかしげる。強さ。それはゲームでは絶対のものであるはずだった。強さを求めて、僕たちは戦場を欠け、敵を倒し、経験値を奪い合う。それが生死を分けると痛いほど理解しているから。

 なのに強いはずの彼女は、浮かない顔で、困ったように俯いている
 訳が分からなかった。

「あの・・・・・・もしかして、攻略組の人ですか?」

「一応、ね。
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