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《sword art online》 ~クリスタルソウル~
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を振れないが、少女はあくまで冷静だった。今度は鍔を垂直にしてコボルトの胸にあてがい、凄まじい膂力で突き飛ばす。少女より二回りは大きい体躯が宙を舞った。ゲーム内でいうノックバックというやつだ。僕は完全に度肝を突かれた。テクニック、パワー、スピード、どれをとっても自分とは次元が違う。
吹き飛ばされたコボルトが再び少女に切りかかって行く。その顔に焦りが浮かんでいるように見えるのは気のせいではあるまい。先程より鋭さを増した斬撃が何度も降りおろされる。しかし、少女は顔色一つ変えず、それら全てを受け流した。まるで少女を取り囲むバリアがあるように、攻撃は服の端にかすりさえしない。逆に、鋭い反撃はコボルトのHPを徐々に削っていく。
「ガルァッ!」
コボルトは少女から大きく距離を取った。このままでは勝てないと察したのか、間合いを大きく開けたままカトラスを肩に背負う格好で構える。万策尽きて受けに回ったわけではない。高熱で炙ったようなオレンジ色にカトラスが輝き出したのを見て、一瞬少女の肩が強張る。
あれはプレイヤーと亜人のみに許された独自の攻撃手段、ソードスキルだ。このゲームには魔法という絶対的な攻撃手段が存在しない。代わりに、無限に等しい数の剣技を習得することができる。武器によって使える種類が異なったり、それぞれが変わった性質を持ち合わせているが、どのソードスキルにも一貫して言えることがある。それは、通常攻撃より遥かに強力であることだ。
カトラスに集中したエネルギーが臨界点を向かえる。発動までゼロコンマ数秒もない。僕は思わず叫んでいた。
「危ないっ!」
瞬間、爆発的な勢いでコボルトが飛び出した。数メートルの間合いが一瞬で埋まる。オレンジ色の軌跡を描くカトラスの先端が空気を焦がしつつ、少女を狙って切り払われた。
が、そこにあったのは白い影のみで、肝心の少女は忽然と姿を消していた。
またしても攻撃を外した敵が、憤怒の形相で上空を見る。そこでようやく僕にも気がついた。少女は消えたのではなく、目にも止まらぬ速さで上空に逃れたのだ。ソードスキルを完璧に見極めなければできない芸当だ。しかもただ飛んだだけでなく、少女はまるで羽でも生えているかのように空中で一回転し、剣を逆手に構えていた。おそらく、あれもソードスキルのモーションだ。
案の定、刀身を包み込むように深紅の光が迸る。コボルトのソードスキルが爆発だとするなら、彼女のそれは流れる水のように静かだった。しかし、繰り出される技のスピードは敵の比ではない。
剣を振り抜いた気配すら感じさせず、空気の破裂する音と、深紅の軌道が宙に刻まれる。
パンッ!
あっさりとコボルトの首が切り飛ばされた。そいつはきっと、死を自覚する暇もなかったに違いない。生き別
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