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赤い花白い花
第三章
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 笑って皆に言う。
「これはね。内緒なのよ」
「内緒って何よ」
「何か余計に気になるわ」
「それでもよ。言えないのよ」
 それでも言おうとはしない久美子だった。
「このことはね」
「何かそれってどうなのよ」
「ここまで来て言わないなんて」
「悪いけれどね。とにかくよ」
 皆に対して告げる。
「コンサートはじまるわよ。早く行きましょう」
「やれやれ。強引なんだから」
「まあピアノ好きだからいいけれどね」
「聴くとそれだけでもう満足できるから」
 久美子の翔一のピアノへの言葉だ。
「本当に凄いんだから。彼のピアノって」
 そう語る久美子の左胸には二つの花があった。赤い花と白い花。今はブローチだが確かに彼女の胸にあり続けている。そこでクリーム色のスーツを、彼女自身を飾っているのだった。あの時翔一と約束した時のまま。二つの花が彼女を飾っているのだった。


赤い花白い花   完


                  2008・9・10

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