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僕の生まれた理由
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                  僕が生まれた理由
 僕が生まれた時のことはあまり覚えてはいない。ママから出て来た時には何匹か兄弟がいたのはぼんやりとだけれど覚えている。けれどその他のことは本当に覚えてはいない。
「生まれたね」
「ああ、やっとだね」
 そんな話が聞こえていたのは覚えている。それから暫くはママのお乳を飲んで過ごしていた。けれど飲むだけで頭が一杯でやっぱりその他のことは覚えてはいない。
 お乳から柔らかい丸い食べ物をもらえるようになると誰かがおうちにやって来た。ここの家の人じゃないのはわかった。見たことのない小さな人だった。
「本当に一匹もらっていいの?」
 その小さな人はおうちの人と何かお話をしてた。けれど何についてのお話だったのかはこの時はわからなかった。その人が僕のところに来るまでは。
「どれがいい?」
「そうだなあ」
 その人は僕達の中から誰かを探しているみたいだった。そして僕も見ていた。
「ねえ」
 僕を指差して言った。
「この背中が黒と黄色の模様の白い猫だけれど」
「それでいいの?」
「うん。可愛いし。これでいいよ」
「わかったよ。おい」
 おうちの人が僕に話しかけてきた。
「御前の御主人様が決まったぞ。よかったな」
 よかったと言われても何がよかったのかわからなかった。ただこのおうちから離れなきゃいけないだろうとは思っていた。けれど寂しくはなかった。そのうち離れなきゃいけなくなると何となくわかっていたからだった。
「よし、おいで」
 その人は僕に声をかけてきた。そして僕を抱き上げると籠に入れた。何故かわからないけれどその手は凄く柔らかかった。ずっと待っていたみたいに温かい手だった。
 籠に入れられるとうとうととして寝ちゃった。起きると全然違うおうちにいた。木が多くて大きなおうちだった。
「只今」
「おかえりなさい」
 そんな挨拶をおうちの人達がしてた。僕は籠から出されるとこう言われた。
「ここが御前のおうちだよ」
 ここが。見回すと何から何まで見たこともないようなのばかりだった。絵が動く不思議な箱は前のおうちにもあったけれどここではずっと大きかった。
 歩きだすとおうちの人達がやって来た。この人達が僕の御主人様達なんだろうか。
「まだ小さいな」
 大きな男の人がそう言った。
「まだ子猫なのね」
 次に大きな女の人が言った。
「子猫でよかったんだろう?」
「ええ、まあ」
 大きな女の人が僕を連れて来た小さい人に言った。僕はそれを見上げて聞いていた。
「うちの新しい猫にって」
「それはそうだけれど」
「何か弱々しいし」
「これから大丈夫かしら」
「大丈夫だって」
 小さい
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