僕の生まれた理由
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旦那様はいつもそうだ。僕達が側にいるだけで凄く嬉しいようだ。そしてよく可愛がってくれる。それがまたとても嬉しかった。
「だから。行こうぜ」
「わかりました。それじゃ」
「あ、俺も」
「俺も」
ダイザエモンさんとショウザエモンさんも一緒になった。僕達はまとまって旦那様のところへ行った。予想通り満面の笑顔で僕達を迎えてくれた。
「おお、よく来たよく来た」
僕達を撫でながらこう言ってくれる。
「お父ちゃんと遊んで欲しいんだな」
「何かいつもこんなこと言ってますね、旦那様って」
「猫が本当に好きなんだよ」
ダイザエモンさんが教えてくれた。
「旦那様が猫飼いたいって言い出したらしいし」
「じゃあ僕達がここにいるのは旦那様のおかげなんですか」
「まあそうなるな。俺もショウザエモンも引き取ってくれたし」
「へえ」
「俺と兄貴が駅の隅っこで二匹で縮こまっていたんだっけな、あの時は」
「そうだったな、真冬の寒い時で」
ダイザエモンさんの目もショウザエモンさんの目も遠くを見るものになった。
「夜になってな。その時は餌もくれる人もゴミ箱の生ゴミもなくて」
「腹空かしてたんだよ」
「野良猫って大変なんですね」
僕は野良猫になったことはない。けれどこれも不思議なことにそれがどういうことかよくわかった。寒いのもひもじいのも身体でわかっていた。本当に何故かはわからない。
「その時にな、拾われたんだよ」
「旦那様に。それでこの家に来たのさ」
「辛かったんですね」
「この街は大体いい人ばかりで餌にはあまり苦労しなかったけどな」
「その日はたまたまな。まあそれで旦那様に拾われたんだけれど」
「他に旦那様に拾われた猫はいるんですか?」
僕は気になって尋ねてみた。
「タマだってそうだぜ。あいつもよく駅にいたんだ」
「タマさんも」
「他にも拾われた猫はいるけどすぐに誰かにあげてるな。家に置いてもらえたのは俺達三匹だけだな」
「どうしてダイザエモンさん達だけなんですか?」
「あ、それはまあ」
ここでダイザエモンさんもショウザエモンさんも少し口ごもった。
「ちょっとな」
「誰にも貰われなかったんだよ」
「タマさんも」
「まあな。そういうことだ」
「ルイは貰われたんだけれどな。他所の家から」
「ルイさんはそうだったんですか」
「そうさ」
ここで横から声がした。見ればそのルイさんがいた。
「僕は御主人様がもらって来たんだよ。丁度御前さんと同じようにな」
「ふうん」
「ケムンパスさんが最初にいてね。あの人は血統書まである由緒正しい猫なのさ」
「そういえばケムンパスさんだけ何か違いますよね」
「まああの猫
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