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僕の生まれた理由
僕の生まれた理由
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のもと聞いた時は呆れたわよ。あの箱にいる虫のことなんだもの」
「箱の中の」
「前言ったわよね、あの絵の箱のこと」
「はい」
「旦那様の好きな虫らしいけれどね。どういうのか知った時は本当に嫌だったわ」
「御主人様とお嬢様の名前も旦那様がつけたらしいけれど奥様今でも嫌がってるし」
「そうなんですか」
 タマさんに言われて顔を向けた。
「そう思うとあなた運がいいわよ」
「はい」
 それを聞くとまた嬉しくなった。
「御主人様の方がセンスがよかったんだから」
「そうね。それにしても」
「何ですか」
 ケムンパスさんがまた考える顔をしたので尋ねた。
「やっぱりその名前になったわね」
「こげんたって名前のことですか」
「ええ。予想はしていたけれど」
「この名前に何かあるんですか?」
「どう思うかしら、自分の名前に」
「それは」
 ケムンパスさんに言われて考え込むことになった。
「何か、凄く温かくて、優しい名前に思います。言われると落ち着きますし」
「そうでしょ。その名前はね、多くの人に大事にされている名前だから」
「多くの人に?」
「そうよ。その名前はね、あんたが生まれる前にもう決まっていたのよ」
「決まっていた」
「あんたの名前になることがね」
「?」
 ケムンパスさんの言っていることがわからなかった。思わず首を捻ってしまった。
「あの、それはどういうことなんでしょうか」
「わからないわよね、やっぱり」
「ううん」
「仕方ないわ。けれどそれもわかるようになるから」
「そうなんですか、これも」
「そうよ。その時色々と辛いこともあるかも知れないわ。けれど忘れては駄目よ」
「何をですか?」
「あんたにね、大勢の人達が泣いたのよ。そしてその人達が動いたの」
「人間が」
「ここに来た時人間が怖いって思ったって言ってたわね」
「はい」
 その通りだった。特にお嬢様に左耳を触られた時はそうだった。あの時は本当に怖かった。
「それもね、仕方のないことなのよ。あんたにとっては」
「耳や尻尾が痛くなったりするのもですか?」
「そう。けれど今は痛む?」
「いえ」
 僕は首を横に振った。
「ここのおうちの人達と一緒にいると。何か痛くなくなりました」
「そうでしょ。確かに旦那様のセンスは悪いし奥様は厳しいけどね」
「はい」
「それでもあんたのことは大事に思ってくれているから。安心してね」
「わかりました」
「わかったらちょっと行こうぜ」 
「何処にですか?」
 ルイさんが声をかけてくれた。
「旦那様のところさ。僕達が側にいると喜んでくれるんだ」
「そういえばそうですね」

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