僕の生まれた理由
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と一緒にお嬢様の部屋に入った時にそう言われた。
「御主人様と比べるとずっとな。自分が不機嫌な時は僕達を部屋から追い出すから」
「そうなんですか」
「まあ特に暴力を振るったりはしないし。怒る時は怒るけれどそんなにきつくないし」
「はあ」
「まあそういう人だから。お嬢様とのお付き合いは程々にな」
「わかりました」
実際にお嬢様は僕達にはあまり構わない。けれど気が向くと僕達の側に来て喉や耳を触ったりする。特にお腹を触るのが好きみたいだ。
「こら、デブ猫」
ルイさんにもそう言って笑いながら触る。
「ちゃんと運動もしなきゃ駄目よ。そっちの子まで太ったらどうするのよ」
「ちぇっ、これは体質だよ」
ルイさんはお腹をさすられながら不満そうにそう言う。
「太っていてもいいじゃないか。別にお嬢様に迷惑かけてるわけじゃないし」
「何か楽しんでるみたいですよ」
お嬢様の顔を見ているとそう思えた。ルイさんのお腹を楽しそうにさすっていた。
「それはわかるよ。けどな」
「けどな?」
「何か嫌なんだよな、まるで僕がこの家で一番デブみたいで。どっちかっていうとダイザエモンの方がデブなのにな」
「ダイザエモンさんもよくお腹を触られていますよ」
「結局そうなんだよな。まあこのお嬢様には触らせるんだ。いいな」
「わかりました」
僕も触られた。左耳に指をあてられた。
「大きな耳してるわね」
一瞬ビクッとした。その耳を触られるのは抵抗があった。けれどそれはほんの一瞬のことだった。
優しい手だった。あったかくて、それでいて柔らかかった。お嬢様は僕の左耳を優しく撫でてくれた。撫でられているうちに目が細くなっていくのがわかった。
「あら、気持ちいいのかしら」
その通りだった。耳を触られると気持ちがよかった。
「耳だけじゃ不公平よね。ここも触ってあげるわね」
今度は喉だった。
「尻尾も綺麗だし。貴方中々ハンサムじゃない」
尻尾も一瞬抵抗があった。けれど触られると気持ちがよかった。
「このまま大きくなったらいいわ。そうしたら立派な猫になれるわよ」
目を細めながらそれを聞いていた。今はただお嬢様に撫でてもらってそれで気持ちよくなれればそれでよかった。それだけで充分だった。
ある日僕は気付いた。まだ名前がなかった。
「あ、それなら今御主人様が考えているわよ」
「御主人様が」
「ええ。今までは旦那様がつけてくれたんだけどね」
「はい」
僕はケムンパスさんに言われていた。
「いい加減センスが悪いって。それで今度は御主人様がつけることになったのよ」
「そうなんですか」
「まあ旦那様よりはいい名前になるんじゃないかしら。あたし達なん
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