僕の生まれた理由
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「一度ここに野良犬が入り込んだんだよ」
「はい」
「あたしが追っ払ってやったよ。この爪と牙でね」
「強いんですね」
「この家はあたしが預かってるようなもんだからね。少なくともあんた達は」
「僕達は」
「そうさ。縁があってこの家に来たんだ。あたしは最初にこの家に来た猫だからあんた達の先輩にあたるだろ」
「ええ」
「だったら守るのが当然じゃないか。何があってもね。それにその為にあたしは力を与えられたんだろうし」
「猫が持っているっていう魔力ですね」
「そう。あんたにこれを見せる為にも与えられたんだろうね」
ケムンパスさんは考える目をしてそう言った。
「僕にも」
「どうだい、けれどこれで色々とわかっただろう」
「そうですね」
「あんたの生まれた意味も」
「はい」
本当によくわかった。どうして僕が今生まれてここにいるのかを。そして旦那様やケムンパスさん達に出会えたのかを。
「猫も人間もね、前に酷い目に遭ったら今度は幸せになる権利があるんだよ」
「権利が」
「そうさ。だって当然じゃないか」
ケムンパスさんは言う。
「誰んだって幸せになることができるんだよ。それなのに不幸になってしまったら何処で幸せになるっていうんだい?」
「それは」
「だからあんたは今ここにいるんだ。わかったかい」
「はい」
まだ実感が湧かない。けれど何となくわかってきた。
「人間にね、酷い目に遭わされたのはわかったね」
「ええ」
「けれど今度はその人間に大事にされているんだよ」
「そうですね」
「そしてあんたを知って多くの人間がね、思ったんだよ。あんたみたいな猫をこれ以上増やしちゃいけないって」
「そうなんですか!?」
信じられなかった。僕を酷い目に遭わせた人間が。旦那様達みたいないい人達なんだろうか。
「そうさ。ここにいる猫は皆それぞれ違うだろ」
「はい」
「人間だって同じさ。皆違うんだ。いい人もいれば悪い人もいる」
「旦那様や御主人様みたいな人が」
「わかったね。あんたが生まれ変わった意味の一つにそれがあるんだよ」
「それが」
「人間にもいい人がいるってことをね。神様がそれをあんたに知ってもらう為に生まれ変わらせたんだよ、また猫に」
「神様って凄いんですね」
「いや、神様が凄いんじゃないよ」
ケムンパスさんはそれには首を振った。
「あんたは幸せになって、いい人間も一杯いるってことを知ってもらう為にここにいるんだから」
「そうなんですか」
「そうさ」
ケムンパスさんは力強く頷いた。
「これからはね、思い切り楽しく生きるんだ。前の分まで」
「幸せに」
「そしていい人達に囲まれてね。わ
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