第八十話 本番その一
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第八十話 本番
大会当日になった、琴乃は朝起きてすぐに朝食の場で母親に言われた。
「今日よね」
「うん、今日本番なの」
「マラソン大会ね」
「正直緊張してるわ」
朝御飯にだ、御飯に納豆をかけつつ母に応える。
「完走目指してるけれど」
「姉ちゃん今もいつも走ってるだろ」
琴乃と同じ様に納豆を御飯にかけつつだ、弟は姉に言ってきた。
「中学の時から」
「まあね、けれどね」
「それでもかよ」
「緊張はしてるわ」
こうその弟に答えるのだった。
「完走出来るかどうかね」
「けれど前はいけたんだろ」
「部活の時はね」
「だったら大丈夫だろ」
完走出来るというのだ。
「がっつり食って準備体操したら」
「調子がよかったらね」
「大丈夫だろ、たださ」
「ただ？」
「怪我するなよ」
それは、というのだ。
「怪我したら大変だからさ」
「そうなのよね、そのことはね」
「筋痛めるとかな」
足のそこをだ。
「後々厄介だからな」
「準備体操はよくしていけよ」
父もこう言ってきた、納豆をかけた御飯とメザシを一緒に食べている。
「身体をほぐしておかないとな」
「いきなり走ったらね」
「ああ、それが一番危ないからな」
だからだというのだ。
「スポーツの前はまず準備体操だ」
「絶対にね」
「準備体操をしていれば怪我をしないんだ」
絶対に、というのだ。
「高見山親方もそう言ってるからな」
「怪我をしないで完走ね」
「それを目指せ、いいな」
「ええ、最初から順位は考えてないから」
琴乃は軽音楽部だ、それでだった。
自分でも大会の順位は考えていなかった、そうしたことは陸上部やそうした面々の独壇場だと割り切っているからだ。
だから順位はいいとしてだ、こう言うのあった。
「走っていくわね」
「順位はどうでもいいでしょ」
母もこう言ってきた、既に席に着いていて味噌汁を飲んでいる。赤味噌で中には魚がある。
「完走が第一よ」
「そうよね、まずはね」
「走るからにはね」
「完走よ、お母さんバレー部だったけれど」
「そういえばそうだったわね」
「そう、女子バレーボール部だったから」
それで、というのだ。
「走ってたけれど」
「それでもやっぱりマラソン大会はね」
「陸上部よ」
その陸上部でも、である。
「しかも長距離走の子の独壇場だから」
「私達はね」
「いつも完走だけを目指してたわ」
「順位じゃなくて」
「そう、完走よ」
このことを第一に考えていたというのだ。
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