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覇王と修羅王
合宿編
二十一話
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ったようなので、アインハルトもこれ幸いと聞こえなかった事にした。でないと、アレクの呟きに何かの拍子で頷いてしまいそうになる。首を傾げるクリスにも気にしないようにと首を振った。

「……で、此方がですね」
『ああ、もう聞いとるよ。……そっちの女の子がハイディ・E・S・イングヴァルト、覇王クラウスの正統で覇王流を受け継いでいる。ちょっとやんちゃしたみたいやけど、これからはノーヴェ師匠たちと一緒に頑張って行く子、やろ?』
「もう一人の、アレクの方もご存知ですか?」
『知っとるよー。……アレク・N・アルヴァーク。歴史に記されていない古代の王、修羅王アレディ・ナアシュの血統。こっちもやんちゃは控えるようになったみたいやし、二人纏めて力になるよー』
「……俺は被害者なんすけど」

 ぐっ、と手を握りながら任せろと笑うはやて。
 だが、アレクは力に成ってもらう気は無い。それに、やんちゃをしたのはアインハルトで自分は被害者である。
 つい一言を口に出すと、はやては意外そうな顔をした。

『あれ、憶えてないん? 自分もストリートファイトしとったやん』
「え? そうなの?」
「……アレクさんも?」

 何故知っている!? とアレクは叫びそうになるが、グッと我慢した。好奇と疑問の視線が刺さっている事もあるが、其れ以上に何か思い出しそうな気がしているのだ。
 もう喉元まできているが、それ以上出てこない。

『あ〜、その様子だと私のことも憶えてなさそうやなぁ』
「……もしかして、何処かでお会いしてやした?」
『してたよー。それに一緒に警防署まで行った仲やないか、アレきゅん?』
「………………ああーっ!! あんたあん時の酔っ払いかっ!?」

 見開き席を立ち指差すアレクに、はやては満足そうに頷いた。

「アレクとは何時知り合ったんですか?」
『もう……二年以上前かなぁ? 夜中、郊外で賑やかな声が聞こえたんで気になって行ってみたら、ストリートファイトの現場だったんよ』
「……アレクはそこのファイターだったんですか?」
『そうそう。――――賭博のな』
 
 お前そんなことしてたのか、というルーテシアとアインハルトとクリスの何とも言えない視線がアレクに突き刺さるが、アレクは気付かない。
 今のアレクに渦巻くのは、臨時収入を潰された怒り。当時の感情まで思い起こされていた。
 はやてに連れられ警防署に顔を出した時、丁度フェルヴィスも居たので真っ先に鉄拳が落ち、あれよあれよと警防署公認の問題児に。それから暫く郊外の方で喧嘩などが起こる度に呼び出され、関係有るかと問い質された。そして、目を付けられたお蔭で、賭博ファイターへの復帰は完全に断たれ、臨時収入を失った。

「あんたが現れなきゃ……俺は貧乏とは無縁だったのに……」
『アレ
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