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第四十三話 相互意識干渉
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(あなたも、力を欲するの?)
意識を失い、ただ海へと沈んでいくはずだった紫苑。しかしそんな彼にどこからともなく声が聞こえる。
(……誰?)
そこで紫苑は自分の状態に疑問を感じる。海へ落ちたはずなのに、そんな感覚がない。いや、それどころか意識を失っていると認識できる自分に激しい違和感を感じていた。
そしてそれ以上に、そんな自分に話しかける声が聞こえてきたことを不思議に思う。
(私のことはいい。今は、あなたがどうしたいか)
しかし、声の主は紫苑の疑問に答えるつもりはないらしく淡々と言葉を発する。
(力……欲しいよ。彼には……織斑君には偉そうなことを言っても、僕にだって力が足りない。少なからずこの手の届くところにいる人くらいは……守れるようになりたい)
これは紫音として、ではなく紫苑としての偽りない本音であった。
(そう、なら力を貸す。でも覚えておいて。全てを守ることなんて、決してできない。あなたも……いつか選択するときが来る)
紫苑もそれは理解しているつもりで、だからこそ一夏のような甘い理想を語るつもりもなかった。しかし、それでも声の主は紫苑に冷たく警告をする。
(そのときに迷わないように、後悔しないように……今から覚悟しておいて)
紫苑はその言葉をありもしない仮定の話だとは思わなかった。かつて一度、束と楯無が敵対したときのことを考えたこともある。
故に、彼は誰とも知れぬ声の主からの言葉を噛みしめるように受け入れた。
(もっと強くなって。そしていつか……彼女を……)
続けて何かを呟きながら、しかし次第に遠くなるその声はやがて聞こえなくなり、気配も完全に消え去った。
「西園寺さん!?」
理解できない現象に、しばらく呆けていた紫苑に再び声がかけられる。
しかし先ほどもそうであったがそれは声というより、直接意識に働きかけるようなものだった。そして、それが誰のものであるかすぐに認識できた。
「織斑君?」
そうして声のした方へ振り向こうとして、ふと自分の今の状態を認識してしまった。
彼は何故か裸だったのだ。
(うえっ、ちょっとこれどういうこと!? 夢……にしてはリアルだけど、現実にしては違和感がありすぎる。いやそれより、もしも夢じゃなかったときに僕の裸を織斑君に見られるのはいろいろとまずい!)
いかに女性にしか見えない彼とはいえ、完全に裸の状態であれば言い訳できない。紫苑はとりあえず現状の分析は置いておいて、まずはこの場を切り抜けるべく、振り向かずに背後にいるであろう一夏と会話をすることにした。
「よかった……無事だったんですね。でもここは……? あ、それと女の子見かけませんでした? 白いワンピース
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