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第四十三話 相互意識干渉
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束さんが立ち去ってから数分、僕らは全ての準備を終えて出撃の指示を待っていた。状況把握から作戦立案、そして束さんの乱入と機体の調整。それら全てをこの短時間でできたことが驚くべきことだけれど、それでも時間は残されていない。おそらくあと数分で銀の福音は予定ポイントへ到達するだろう。
天照を身に纏い束さんが用意したパッケージを装着していると、少し離れたところで織斑君と箒さんもそれぞれ同じように白式と紅椿を展開している。どうやら何か話をしているようだけれど、箒さんの機嫌がいい。いや、良すぎるほどだ。
待ち焦がれた専用機、そして織斑君との共同作戦。彼女にとっては降って湧いたような幸運なのだろう。それが浮ついた状態の今の彼女を作り出している。
織斑君もそれに気付いたのか、微妙な表情を浮かべている。
「最後に作戦内容をもう一度確認しますね。まずは篠ノ之さんの紅椿の背に織斑君の白式が乗り、私は専用パッケージにて目標へ接近。それでもスペック差から私は遅れることになりますが、奇襲目的とあくまで私はサポートであることからお互い速度調整等は一切なしで全速力で向かうことになります」
割り込む形になったからか、作戦に私が参加することを思い出したからか箒さんがあからさまに表情を歪ませる。気持ちはわかるけれど時間もないのだし許してほしい。それに今はそれどころではないことも理解してほしい。
『そして今回の作戦の要は一撃必殺だ。あくまで西園寺は保険。理想は織斑と篠ノ之、二人によるファーストアプローチでの撃墜だ。西園寺が戦場に到着する前にケリをつけろ』
僕の言葉を引き継ぐように千冬さんからオープン・チャネルで通信が入る。
『西園寺、どうも篠ノ之は浮かれている。それに織斑も……一夏もこういった作戦行動は初めてだ。何が起こるかわからない、できるだけサポートを頼む』
直後、同じように聞こえてきたのは僕にだけ聞こえるプライベート・チャネルによるものだった。
『わかりました』
『頼むぞ』
僕も実戦は初めてのようなものなんだけどな、と思ったが言っても仕方ないので普通に答えた。でも実際僕は命のやり取りといったことをした経験は少ない。せいぜいが亡国企業の襲撃時とラウラさんの一件くらいだし、それ自体も本格的なものではなかった。
でも、なぜか冷え切ったほど落ち着いている自分がわかる。緊張や不安といったものが一切感じられない。過信しているわけでも慢心しているわけでもなく、ただ冷静に自分を見ることができる。
むしろ、怖いのはこの事件の与える影響だろう。
この戦いで自分が命の危険に晒されること、そして自分が誰かの命を奪うかもしれないこと、どちらも覚悟している。
まずは大切なものを守る、そして自分も生き残る。その上で出来ることを
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