第百六十九話 三方ヶ原の戦いその六
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坂の上にいる武田軍に一斉に向かう、そして。
その彼等を見てだ、信玄は悠然と微笑み言った。
「見事、降ってはそれで終わりじゃが」
「こうしてですな」
信繁が信玄の傍に来て言ってきた。
「ここは」
「それではですな」
「うむ、ではな」
それではだというのだ。
「御主に九千の兵を預ける」
「はい」
「それで後詰となれ」
「では御館様が」
「うむ、手筈通りじゃ」
ここでも山県、そして幸村を見て言った。
「先陣を任せるぞ」
「わかりました、では」
「今より」
その山県と幸村が応える、そのうえで。
信玄は悠然と後ろに下がる、その彼と入れ替わりに。
山県と幸村がだ、先陣に告げた。
「では今よりじゃ」
「徳川との戦じゃ」
こう言うのだった。
「ではよいな」
「攻めるぞ」
「はっ、では」
「今から」
「褒美は思いのままぞ」
山県はこれを出して兵達を激励した。
「今より我等の戦を三河武士に見せてやろうぞ!」
「おおーーーーーーーーっ!!」
武田の赤い軍勢も吠えた、そのうえで。
一気に坂を駆け下りてきた、そうして鶴翼で駆け上がって来る徳川の軍勢に魚鱗の陣で突き進んだうえで。
戦は一瞬で決まった、まさに一瞬だった。
武田の勢い、そして強さは本物だった。徳川の精兵金ヶ崎でも姉川でもその強さを天下に知らしめた彼等がだ。
一瞬で崩れた、徳川の黄色の旗が瞬く間に崩れていく。
坂まで一瞬だった、武田軍は降り。
突き崩した徳川軍をさらに攻める、その中で信玄の軍配が動く。
「疲れたならじゃ」
「はっ、その時はですな」
「新手をですな」
「出せ、徳川は一万二千」
その彼等に対してだった。
「我等は三万六千じゃ」
「その数を使ってですな」
「新手を出して」
「次から次に攻めよ」
まさにだ、そうせよというのだ。
「ではよいな」
「はい、それでは」
「そうして」
「うむ、完膚なきまで崩すのじゃ」
こう言うのだった。
「ではよいな」
「はい、では」
「御館様の仰るまま」
武田の者達は信玄の言葉のままだった、新手を次から次に出して徳川を攻める。山県の攻めで崩れていたが。
その中でもだ、この男は別格だった。
「真田幸村推参!」
幸村は自ら二本の槍を馬上に操りだ、そのうえで。
徳川の猛者達を薙ぎ倒していく、それを見て大久保彦左衛門が思わず言った。
「あれが真田か」
「鬼か、あれは」
酒井もだ、その幸村の戦ぶりを見て唖然となっていた。
「何という強さじゃ」
「噂には聞いていましたが」
「うむ、鬼じゃ」
まさにそれだというのだ。
「並の者ではない」
「あの者一人だけで」
ただ武芸が凄いだけではなかった、その采配もだった。
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