覇王と鳳が求めるも麒麟に首は無く
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ている。
深い意味が分からずとも、彼女は本能的に理解している、と気付いた雛里は嬉しくて心の中で小さく笑う。
徐晃隊を扱うという事は、決断を下す覇王の精神状態を擬似的に味わうという事。最大成果と最効率の為に自分に従ってくれる者達を切り捨てるとはそういう事。
扱い続ける、率いるならば何になるのか。いつか切り捨てる命と知りながら絆を繋ぎ、その者達の願いを叶える為に想いを繋ぐとはどういう事か。
つまり徐晃隊は、規模の小さな覇王の軍。付き従う兵の一人一人が将であり兵という、大陸でも類を見ない程に異質な部隊。激情によって発生するただの死兵では無く、呂布隊や張コウ隊のような飼いならされた常時死兵でも無く、それぞれが“個”であり隊員全てが“己”である異質な兵。
彼らを完全な状態で率いる事が出来るのは、信を置いた彼らの為の御大将、黒麒麟しか在り得ず。
「問題ありません。想いの共通認識は洛陽の決戦と徐州防衛にて掌握済みです」
ただ、雛里や副長は黒麒麟では無いが扱い続けられたのも事実。
副長は狂信者の最頂点に位置する為に右腕として。雛里は徐晃隊に絶対の信を置かれる存在であるが故に道を照らす鳳凰として。
ただ一つの目的の為に預けられる重責は軽減され、全ては望まれた世界を作り出す事で贖われる。二人の想いすら、黒麒麟が背負うだけなのだから。
それは曹操軍の在り方と同じである。
人の命を駒と見て、盤上の遊戯のように戦を行うは覇王。責を全うするのも背負うのも全てが覇王曹孟徳ただ一人である。だから桂花達軍師は冷徹に戦を進めようとも、心に掛かる重圧が軽減されていたのだ。
冷たい雛里の声を聞いて、桂花も稟も、ゴクリと喉を鳴らす。自分よりも幼い見た目の少女が化け物に見えていた。
対して華琳は、小さく称賛の吐息を零した。
「いいでしょう。この戦ではあなたが徐晃隊を率いなさい。ただし、攻撃主体戦術と『黒麒麟の嘶き』の使用は禁止、どの戦場でも防御主体戦術を用いて他の部隊の補佐、一人でも多くの徐晃隊を生き残らせること」
言われて直ぐ、雛里は華琳の狙いを読み取った。
「……徐晃隊の戦術を他の部隊に取り込む為、ですか」
「そうよ。まだ将の色に染まり切っていなくて、歩兵が主体の楽進――凪と于禁――沙和の部隊に覚えさせるため。特に沙和の部隊は対応力の点に於いて近しいモノがあるから、ある程度は使えるようになるでしょう?」
「生き残っている徐晃隊の戦術でしたら十分真似る事は可能かと」
含みのある言い方をされて、華琳は片眉を上げて思考に潜る。
徐晃隊の流れるような連携連撃は自分の軍でも訓練を積めば可能であると判断していたが、雛里の言葉は真似る。本当に再現する事は不可能だと言っているようなモノであった。
雛里はちらと瞳を横に
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