覇王と鳳が求めるも麒麟に首は無く
[3/20]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
しい声音を紡いでいく。
「あなたはこれからどうしたい?」
愛しい者に忘れられ、それでも日輪へと飛ぼうとする少女を想って、華琳は行動を縛ろうとせずに先手を委ねた。軍師としてか、少女としてか、お前は何を望むのかと裏に秘めて。
雛里の冷たい瞳には感情が無い。否、全てを封じ込めている。固く閉ざされた殻によって、その内側にある絶望は誰にも測れなかった。
「彼の代わりに想いを繋ぎます。徐晃隊を扱えるのは彼と私、そして忠義に殉じた徐晃隊副長だけですから」
雛里の言葉を聞いて血の気が引いたのは桂花と稟。
彼女達は華琳の命令で徐晃隊を扱おうと試みていた……が、無理だった。
軍師として扱う事は確かに出来た。思うままに動く部隊ほど、軍師が求めて止まないモノは無いのだから。
初めは難なく指示を出し、手足のように動く部隊に感嘆の念を感じながら戦を行っていたが、時間が経つにつれ、戦闘を重ねるにつれ……見れば見る程、扱えば扱う程に彼女達は心が擦り減っていった。戦場の狂気など遥かに凌ぐ、狂信と言う名の殉死によって。
桂花は……戦闘終了後に瀕死の重傷を負った隊員が、目の前で周りの兵に想いを託し、仲間殺しの負担を与えないよう笑顔を向けて自刃するさまを幾度も見て、誰にも見られないよう駆けこんだ天幕の中で圧し掛かる想いの重圧に耐えられず吐いた。
稟は、華琳が指示した攻撃主体命令を行わせ、笑顔を向けて死んでいく彼らの死に様を見て、自責の念から三日三晩寝る事が出来ずに、徐晃隊の指揮を辞めてやっと眠る事が出来た。
二人の軍師が徐晃隊を扱うに足りないと見るや、華琳は徐晃隊を戦場から切り離した。
ある程度人としての感情を捨て、秋斗達のように想いの共有をしなければ徐晃隊を扱うには足りないのだ。
たった一つの命令をやり遂げる為に死に行く……裏を返せば、その死は全て命令を与えた者に責が圧し掛かる。須らく戦争にて兵を率いるならば当たり前の現実なのだが……普通の部隊を指揮していれば誰が死ぬかは戦場に於いて部隊毎の被害数という曖昧な情報で告げられる為に、その責を感じる事もぼかされる。
しかし徐晃隊の場合は手足のように動かせるからこそ、どの小隊が一番死に易いのか……否、自分で殺すのかが明白である。だから……桂花と稟は優秀にして優しい軍師であるが故に、そして徐晃隊と想いを共有していないが故に、人としてその責を受け続ける事に耐えかねた。
言うならば、兵士を一人一人自分で選別して殺しているようなモノ。完全に味方の命を駒として扱う事が出来ないのならば、通常の精神を持っていては耐えられるモノでは無い。
「ひ、雛里は……アレをずっと扱えるっていうの? あんな……あんな恐ろしいモノを……」
恐ろしいモノ、と桂花は言った。彼女は徐晃隊に心の底から恐怖し
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ