覇王と鳳が求めるも麒麟に首は無く
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呑み込まれそうな昏い色は無く、少しばかりの悲哀を残して、でも私に対して何故か感謝を向けている。
こんなに耐えてる雛里が愛おしく感じて、思わず抱きしめる腕に力を込めた。
「あわ……桂花さん、私は大丈夫ですから――――」
「じゃあ私が大丈夫じゃないって事にしておいて」
言うと雛里は身体の力を抜き、なされるがままになっていた。
――ごめんね、雛里。今のは私が悪すぎた。徐晃隊の事もあったのに。
今度は心の内で謝った。素直に話せない自分が鬱陶しい。でも、普段の雛里は私のそういった部分を結構読み取ってくれる。
それが嬉しいと感じる私は、きっと雛里の隣が居心地良く思い始めてる。人の心に聡すぎる夕と重ねて。
――だけど雛里を支えたいって気持ちは違う。これは友達に向けるモノとは違う。私は雛里をちゃんと見てるんだから。
あの悲壮溢れる交渉の時に生まれた気持ち。もしかしたら、華琳様も私達の事をこんな風に思って下さってるのかもしれない。
着いて来いといいながら細かい所に気付いて何も言わずに支えてくれる私達の王は、優しくて厳しい覇王だから。
きっと、家族に向けるモノに似た想い。
――いいこと思いついたわ。そうよ。そうすればいいじゃない。華琳様も月と内密に約を進めておられるし、私もそういう事をしたって問題は無いはず。
コホン、と咳払いを一つ。
心臓が高鳴る。
親友は居たけど、そういったモノを自分から作った事は無い。だから、緊張してる。
雛里は聞いてくれるだろうか。了承してくれるだろうか。
不安が心を彩る。
きっと聞いてくれると信じて、私は……
「ひ、雛里? こ、ここ、これから、私の事……けけ、『桂花お姉ちゃん』って呼んでも、いいのよ?」
どもりながら小さく言葉を紡いだ。
脈打つ心臓は、恥ずかし過ぎて胸から飛び出しそう。顔が熱いから、赤くなってるだろう。
ぎゅっと目を瞑って返答を待っていた。
でも、返って来なかった。来るはずも無かった。
――雛里……寝てるのね。
耳を打つ鼓動が少しだけ静まれば、聞こえてきたのは小さな寝息。雛里は何処か安心した表情をしながらすやすやと眠っていた。
盛大なため息が零れた。
――今思えば恥ずかしい事を考えた。これは忘れましょう。……うん、忘れましょう。
ちょっとだけ残念な気がするのは気のせいだろう。そう、思い込んでおく。
それより雛里が安心しているのはどうしてか、私には分からない。
私が言った言葉が、彼女の何かを変えたんだろうか。
現実は冷たいって、雛里を傷つける事を言っちゃっただけなのに。
いくら考えても答えが出ず、仕方無しと割り切って、雛里の温もりを感じながら私も眠る事にした。
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