覇王と鳳が求めるも麒麟に首は無く
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必殺の一手を差し込めるようにと。
思考に潜っていると、きゅむきゅむと雛里から手を握られた。
「桂花さんは……お友達と戦う事がお辛くありませんか?」
一寸驚く。まさに、夕の事を考えていたから。
隣を見ると偶然だと分かった。
きっと雛里は諸葛亮の事を考えていて、曇りが出来たんだろう。決意したとは言っても、今日は徐晃隊を鳳統隊に変えた日。心が弱っているんだ。
これ以上落ち込まさないように、空いた手で蒼い髪を撫で……自分の昔の心境を思い出して苦笑が零れた。
「もう割り切ったわ。私は友達も無理矢理手に入れるって決めたの。例えあの子の大切な人を……見殺しにしてでも」
きゅっと眉を寄せた雛里は、私の茶髪を撫で返してきた。
本当に優しい子。私の気持ちを汲んでくれる。分かってくれる。
嬉しくて、くすぐったくて、微笑みが漏れ出た。ただ、雛里に撫でられるというのは少し情けなく感じた。
だからぎゅっと抱きしめてやった。
高い体温が心地いい。まるで心の冷たさまで暖めてくれるかのよう。
ほっとした充足感から、本心を話してもいいかなという気持ちになった。
「きっと怨まれると思う。でも助けたいの。一人よがりの自分勝手でしかない。だけどあの子が大切なの。一緒に、幸せになりたいの。きっとこの気持ちは、雛里が徐晃に向ける気持ちと一緒ね」
「……一緒には助けられないんですか?」
「不可能よ。その人は南皮から出られないし、もう長くない。何より強情な人だから袁家と死ぬわ。助けられるなら、助けたいけど……強欲は人を無駄に殺し、欲しいモノさえ無くしてしまうわ」
「そう……ですか……」
しゅんと落ち込んだ雛里に、申し訳なさが湧きあがる。
――私のバカ。逆に落ち込ませてどうするのよ。私は大丈夫って見せて安心させないと。
「全てを救えるわけないじゃない。いつだって現実は冷たいし――――」
「……っ!」
あ……やってしまった。
雛里が震えだした。私はたまにこうして、したい事とは反対に誰かの心を傷つけてしまう。
昔、夕と明に心理把握と人心操作が下手だと言われた事を思い出した。
こういう時、私には無いモノを持ってる華琳様が羨ましい。きっと華琳様なら間違わずに雛里の心を安息に導けた。
謝ろうとしても、何故か言葉が出て来ない。いつもいつも分からない。どうして華琳様以外には素直に口に出して謝れないのか。
ふと、耳に響いたのは華琳様の言葉。雛里と並び立って支えるのは風でも無く稟でも無く……私ただ一人と言ってくれた。ほんの少し、喉が通った気がした。
「……ご、めん」
喉の奥から、小さく、聞こえるか聞こえないかくらいの声が出た。
腕の中でピタリ、と雛里の震えが止まり、目が合った。
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