覇王と鳳が求めるも麒麟に首は無く
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を写し、一から自分と同じ敵対構想を練り上げ、矛盾のハザマでもがき苦しみながらも平穏を齎さんとした黒麒麟への昏い……怒り。
――そこまで……そこまで劉備に尽くすか。私と共にあるのが嫌か。どこまでも私を認めずに否定するのかっ
華琳は秋斗が壊れても、人としての感情を押し込めるくらいだろうと考えていた。人間不信に陥り、近しいモノ達の暖かさを受けて徐々に回復する事の出来る、必ず直せるモノだと思っていた。矛盾の板挟みから解放された時にこそ、それが為せるのだとも。秋斗が今まで耐えてこられたのが、雛里や月、詠の三人のおかげだと、その細部までは知らないが故に。
追い詰め、追い込み、信じるモノが信じるに足りないと教える事で必ず目を覚まし、曹孟徳という覇道を行くモノに縋るだろうと……あれほどの絶望に濁った眼をしていたならば、必ず華琳の存在を認め、求めるだろうと思っていたのだ。
だというのに、彼は記憶を失ってしまった。縋りつく蜘蛛の糸があったにも関わらず、矛盾を貫き通して自身の主を変えずに覇王を否定した……と、真実を知らない華琳には思えてしまう。
本来なら華琳の予想は正しい。効率を重視する秋斗が、桃香の成長が全く違う先に向いた事を理解した時点で華琳を選ばないわけがないのだから。世界改変の思考誘導さえなければ、もしくは途中で秋斗が間違いに気づいていたならば、そんな『もしも』があり得たであろう。
だが、現実に起こった結果はたった一つしかあり得ない。
追い詰めたのは自分、それでも、愚かしい間違いをしていたのは相手。自分の在り方を否定してまで敵対の道を選んでいたのだから。
華琳にとって秋斗が記憶を失ったというのは、まるで大陸を治めるには覇王では足りないと突きつけられているかのように、大徳劉備こそが悠久の平穏を作るに足ると言われているように感じられた。記憶を失ってしまうほど、華琳に仕えたくないのかと。
同じ覇道を行かんとしていた黒麒麟が桃香に従っていただけでも、華琳自身が大徳に頭を垂れているかのようで許せなかったというのに……お前は大徳に及ばない、と突きつけられて怒りに染まらないわけがない。覇王が高みに立つ為に胸に抱いているたった一つのモノを揺るがされて、激情に駆られないわけがなかった。
いつもしているように抑えようとしても抑え込めずに、荒れ狂う心は矛先をナニカに向けそうになっていた。しかし……愛しい部下達の恐れ慄く視線が幾つも突き刺さっていると気付いて、ほんの少しだけ冷静になれた。
後にゆっくりと、目の前に膝を着く少女の冷たい瞳を見据えて、漸く激流の如く溢れていた感情の全てを、内側に無理矢理呑み込む事が出来た。
空気が幾分か和らいで、ほっと息を付いたのは雛里以外の全員。
見苦しい所を見せたわね、というように一つ苦笑を漏らし、華琳は優
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