第5章 契約
第93話 高貴なる魔術師
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も、返って彼女自身が傷付く可能性も高い。
正直に言うと臭い物に蓋をする、と言う結果は好きではないのですが、この部分に関してはむしろ知らない方が残った関係者すべてが傷付かない可能性の方が高いですか。
かなり消極的ながらも、そう言う結論に到着する俺。すべてを知って居る……唯一、生きた状態で捕まったシャルル・アルタニャンが語った内容はイザベラやジョゼフが知って居るだけでも十分でしょう。
言葉にして答えを返さない俺。ただ、これも通常運転中の俺の反応。そんな俺を晴れ渡った冬の氷空に等しい瞳で見つめる彼女。
そうして、
「あの時のアルマンに、あの翡翠の仮面を用意する事は出来なかった。それでも、何故か彼は仮面を被る事が出来た」
まるで新聞の天気欄か、求人広告を読むような無機質な言葉使いでそう続けた。
確かに、タバサの妹の消息を知って居る可能性の有るヤツ……アルマンを簡単に死なせて仕舞ったのはイタイ。折角、掴み掛けた解決の糸口を失ったのは痛恨の極みと言うべきでしょう。
しかし、タバサの言う事には一理も二理もあります。あの時、アルマンの魔法は封じて有りました。あの状態で魔法を行使するのは俺やタバサでも難しいと思います。まして四肢の動きも完全に封じて居ました。この状況で、テスカトリポカ召喚の際に使用される呪物を自ら被る事は不可能だったはずです。
これはおそらく――
「あの時、初めてアルマンは神。テスカトリポカに選ばれたんやと思う」
それ以前は単に自称、神に選ばれた存在。確かに多少の権能を手に入れていたと思うけど、自在にテスカトリポカの能力を操って居たとは言い難かった状態。
しかしあの瞬間。俺に敗れ、憎悪と屈辱に塗れた瞬間、アルマンはテスカトリポカの憑坐として相応しい心を得た、と言う事なのでしょう。
テスカトリポカは不和や憎悪。敵意や争いの神。そして、生け贄を要求する神でも有りますから。
まして、ヤツ……アルマン・ドートヴィエイユと言う人物は神話上の敵役ケツアルクァトルと同じ金髪碧眼。そんな人間を支配して、テスカトリポカを信奉する民たちを虐げ、殺して行ったイスパニアの人間を殺して行くのですから、テスカトリポカの究極の目的にも合致すると思います。
つまりあの瞬間、アルマンの顔に現われた翡翠の仮面は、アルマン自身が被ったのではなく、仮面自身が何処かからアルマンの元に現われたと言う事。流石に、そんな事を予測して置く事は難しいですし、対策を施して置く事も難しかったと思います。
それでも、対策……アルマンと魔界のテスカトリポカとの絆を完全に断つ事は難しかったとしても、仮面が現われる事は防ぐ事が可能だったかも知れないのですが……。
一度、上空に視線を移動させ、世界を満たして行
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