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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第93話 高貴なる魔術師
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当たりを食らわせる形と成る俺。しかし、その勢いを殺すように、ヤツの背後に発生する巨大な魔法陣が描き出されて行く。
 その姿は、巨大な十字架に掲げられた咎人の姿。巨大な魔法円の中に浮かぶ五芒星に半分めり込むような形で光の剣に胸を刺し貫かれている。

 いや、違う。それは――魔法円はひとつではなかった。ヤツ、仮面の吸血鬼と俺を取り囲むように更に立ち上がる五つの魔法陣。それぞれが木火土金水を指し示す色を放ちながら、

 仮面の吸血鬼。……いや、もうその仮面は剥がれ落ち、元の精悍な貴族に相応しい容貌のアルマンの素顔が酷く哀しい表情を浮かべて居た。
 そして……。

 ぐしゃり、と言う音と共に、その身体が崩れ落ちた。
 元々、人間の骨格や筋肉では身長三メートル以上、体重も三百キロ近くの身体を支える事は出来ません。まして、その姿で二足歩行など当然不可能。
 今までヤツが立って動いて居られたのは、テスカトリポカの加護……魔力の供給が為されて居たから。魔力により骨格を、筋力を強化し、自らの周りの精霊を強制的に使役して肉体を維持して居たのです。その魔力の供給が断たれた今、元優秀な系統魔法使いであるアルマンに、精霊が従う訳はありません。

 その巨体を支えるべき両足が潰れ、腕が無力な肉塊と化し……。
 精霊を使役して、無理矢理生命体の振りをしていた身体中の筋肉が肉塊……いや、何かよく判らない黒い物質へと変化し、そこから更に黒い霧状の()()へと変わって行き――

 そして――
 そして、最期には上空で未だ炎を上げ続ける送り火へと吸い込まれて行ったのでした。


☆★☆★☆


「主よ、永遠の安息を彼に与え、絶えざる光を彼らの上に照らし給え」

 俺の独り言に等しき祈りの言葉が、深く吐き出された溜め息のように口元を白くけぶらせた。
 確かに、この場で死した人間たち。生前の彼らが、他人の生命を路傍の石ほども気にしなかった人間たちの命だったとしても、命は命。更に、俺までがアルマンと同じレベルに堕ちる必要は有りません。
 もっとも、彼ら自身に関しては、天網恢恢疎(てんもうかいかいそ)にして漏らさずの言葉通りの結果と成って仕舞いましたが。

「主よ、世を去りたるこの霊魂を主の御手に委せ奉る(まかせたてまつる)
 彼らが世に在りし時、弱きによりて犯したる罪を、大いなる御あわれみもて赦し給え」

 俺の祈りにしては珍しい……知識としてしか知らない西洋の祈りの(ことば)なのですが、それでも生前のアルマンやラバンが信奉していた宗教から考えると、この場ではこの詞が相応しいでしょう。
 但し、邪神の生贄にされた者の魂が輪廻の環に戻るとは考えられないのですが。

 鐘の音が途絶え、上空より紅く照らして居た五山の送
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