第5章 契約
第93話 高貴なる魔術師
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生したグールの群れを相手にしている以上、現状では本体を相手に出来るのは俺とタバサの二人しか居ませんから。
「タバサには翡翠の仮面の方を頼みたい」
再び転移を行い、前方から接近するプラズマと、後方から忍び寄りつつ有った炎の蛇を回避。
その転移の直後に、腕の中の少女に対してそう告げる俺。
そう、仮面の方は破壊すればテスカトリポカとアルマンの間に有る絆を断つ事は可能でしょうが、胸の部分に関してはそれで終わるとは思えませんから。
何故ならば、吸血鬼ヨナルデパズトーリの胸に存在する扉は、おそらく次元孔。異次元に向かって開いた穴で有る以上、物理的に破壊しただけでは異世界との絆は断ち切れない可能性が高い。
そして、タバサは未だ次元孔の閉じ方も、開き方についても教えては居ません。
更に、戦闘に使用する為に予備の術式……術の展開の高速化を行う術式を重ねる事や、術の威力強化の呪文を唱える事も難しいので、流石に魔法の天才……。魔女の中の魔女ヘカテーの加護を受けて居る彼女でも難しいでしょう。
微かに……。本当に微かに首肯いた気配が腕と、そして心に伝わって来る。
獣の遠吠えとも、複数の人間の叫びとも付かない咆哮が俺たちに打ち付けた。それは只の音に過ぎない現象。しかし、神威により強化されたソレは既に物理的威力を備え、普通の人間ならばその中に神の怒りを感じ、その場でただひれ伏せ、神の怒りが鎮まるのを祈るしか方法がない、……と感じさせるに相応しい咆哮。
おそらく、苛立ちが頂点に達したのでしょう。吸血鬼ヨナルデパズトーリが上空を仰ぎ見るようにしながら、猛り吼えて狂って居た。
まるで、その彼方に存在している何モノか挑むかのような雰囲気で……。
その瞬間――
その瞬間、まるで竜巻が発生するかのようにヤツを中心に空気が走り、土砂が、大地を覆う落ち葉が――
そして、紅き泉の水が巻き上げられた。
但し、これはヤツ自身が何か特殊な魔法を行使して居るようには感じない。おそらく、漏れ出した魔力が周囲に影響を与えて居るだけ。たったそれだけの事で、この不気味な色彩の竜巻は完成して居た。
そして再び、ヤツの姿が闇に沈み、振るわれる斧に似た音色が響き渡る。
光……宙に浮かぶ魔術回路が発する光が、昏い嵐の中心に存在するメソアメリカ出身の吸血鬼をぼぅと浮かび上がらせた。
その時――――
一瞬前まで俺とタバサの居た空間が歪んだ。そう、文字通り、空間自体が歪んだように見えたのだ。
おそらくこれは、ハルケギニアのコモンマジックの念動と同じ種類の魔法。不可視の手に掴まれた空間毎、捻り潰されたのでしょう。
但し、その時には既に動きを開始して居た俺とタバサに実害はなし。不可視の手が握り潰したのは空
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