第5章 契約
第93話 高貴なる魔術師
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再び、上空に向け咆哮を放った。その瞬間、ヤツの胸から黒い闇が漏れ出して来る。
触れる物のすべてを奪い尽くすかのような黒き闇。それが彼の神の与える祝福。あの闇に触れたなら、苦悩も、悲哀も、辛苦も、そして絶望も。……全て平等に失って仕舞う。
そう、残る物は只の虚無のみ。
おそらく、ある種の人間に取っては、それも救いと呼べるかも知れない。
しかし――
「アイツと魔界のテスカトリポカの絆を断ち切る必要が有る」
そう説明しながら、右腕でタバサを抱え跳ぶ俺。
刹那、先ほどのプラズマの激突に因り燃え始めた灌木から炎の蛇が生成され、俺とタバサの居た空間を横薙ぎに払った。
しかし、その瞬間には既に空間を移し、まったく別の位置に立つ二人。
「ヤツ……アルマンとテスカトリポカとの絆を」
そう口にした瞬間に再び瞬間移動。今度はグールの攻撃を紙一重で躱し、其処から後方三メートルの位置に転移。
その刹那。
「具体的には、ヤツの魔界と繋がっている胸の扉の部分と、テスカトリポカ召喚の触媒と成って居る翡翠の仮面を同時に破壊する必要がある」
見ている目の前で、白い結晶に包まれて氷の彫像と化すグールの姿を瞳に映しながら、口では先ほどの説明を続ける俺。
但し、口で言うほど、これは簡単な作業ではない。
仮面を破壊しても胸の扉を破壊しない限り、魔界から供給される魔力を断つ事が出来ず、おそらく仮面も瞬く間に再生されて仕舞う。
胸の扉を破壊して魔力の供給を断ったトコロで、仮面を破壊しなければ、今、この場所に蓄えられた魔力だけで、胸に開いた異界への扉など容易く再生されて仕舞う。
双方をほぼ同時に。少なくとも、完全に回復される前に破壊する必要が有りますから。
仮面と扉。双方を破壊すれば、もしそれだけで足りなかったとしても、次の一手でヨナルデパズトーリの憑坐とされたアルマンを何らかの形で封じれば、この事件は終了でしょう。
後方三メートルの位置に転移した瞬間、タバサの手が優雅にひらめき、
再び襲い掛かって来たグールたちを白い結晶が包み込む。そして、次の刹那には、不気味な氷の彫像が複数、誕生していたのだった。
「わたしはどちらを破壊したら良い?」
さも当然のように、俺の腕の中からそう問い掛けて来るタバサ。その部分を自らの式神に任せる、……と言う選択肢は彼女の中にはないのでしょう。
それに、二人の動きをある程度同期させなければならない以上、ソロモンの魔将と雖も、俺と攻撃のタイミングを合わせるのは難しいのも事実です。
まして、マルコシアス及びウヴァルは最初にヨナルデパズトーリから分離した二体の魔物を。レヴァナは、俺の呼び出した剪紙鬼兵たちと共に、その後に発
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