第5章 契約
第93話 高貴なる魔術師
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と同時に、ヤツの周囲に無数の魔法陣が浮かび、何もなかった虚空には数十個の輝ける球体……ソフトボールクラスの球体が発生した。
刹那。その白く輝く球体ひとつひとつが、周囲に向け一斉に発射される!
しかし!
球体が動き出すと同時か、その一瞬前。俺が右斜め後方に跳ぶ……タバサの傍らに向け跳び込むのと時を同じくして、周囲に発生する違和感。
その時、一瞬前まで俺が立って居た空間を超高温のプラズマが通過。その先の地面を大きく焼き、そして抉った。
爆風により、朦々と舞い上がる土煙と落ち葉。しかし、その落ち葉も一瞬の内に燃え上がり、大地に再び降り積もる際には黒い細かな燃えカスへと変化して居る。
しかし、被害はそれだけ。
流石に、前回のゴアルスハウゼン村のクトゥグアに比べると、大地がいきなり固体から気体へと昇華しない分だけ破壊力は小さい。但し、それでも今度の相手も破壊神にして創造神。その神威は並みではない。
焦げた腐葉土と樹木の香りが冬の夜風に、それらに相応しい異臭を付けた。但し、その本来の目的を果たす事はなく、空しく空を切り、大地を、そして森を焦がして行くだけのプラズマ。
しかし――
次々と召喚され、周囲に向け放たれる蒼白き球体。確かに、俺とタバサには一度だけ魔法が反射出来る仙術……呪符が装備され、俺に木行、つまり、雷系の攻撃はそもそも無効。更に、タバサにも俺の属性を付与して有る護符を装備して貰っている。故に、このプラズマによる攻撃はおそらく無効。
但し、兵は詭道。ギリギリまで切り札は取って置くべき。相手にこの攻撃が有効だ、と思わせて置く事が俺たちに不利となる要因はありません。
触れると間違いなく黒焦げ。普通の生命体ならば確実に死に至る球雷。
俺の身体に無数の傷が発生。見ている目の前で、同時に三体の剪紙鬼兵がプラズマの直撃を受け、一瞬の内に元の紙切れへと戻されたのだ。
しかし!
俺とタバサに向け飛来する複数のプラズマ。そのまま突き進めば間違いなく二人に何らかの被害を与えるのは確実なルート。
しかし、その瞬間、俺たちの正面の空間が歪んだ。そう、まるで澄み切った水面。波ひとつ立てていない完全に澄み切った水面に、小石を投げ込んだ時に発生する波紋が次々と広がり――
プラズマがその歪みに衝突。そのまま勢いを殺され、いなされ、逸らされ、後方の森や地面に直撃。確かに破壊を周囲へと撒き散らせたが、肝心の俺とタバサは無傷。掠める事さえなかった。
ただ……。
ただ何もないはずの空間に、まるで纏わり付くかのように残る雷光の蛇が、確かに其処に不可視の壁が存在していた証明のようで有った。
「アイツを倒すには――」
吸血鬼ヨナルデパズトーリが
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