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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第93話 高貴なる魔術師
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 再び復帰した戦場。そこは……。

 目の前に立ち塞がるのは――死そのもの。
 腕が跳ばされると、その切り離された腕から。膝から下を失えば、後方に置いて来られたその脚から。身体の何処かに攻撃を受け、分離させられた部品から自らのデッドコピーを作り続ける元アルマンの魔物。
 その度に胸の扉から発生する黒き闇。
 そう、それはデッドコピー。その姿形は立ち上がった犬の姿に似る。身体中は何か異様な苔か黴の如き物に覆われ、顔かたちは人間と言うよりは犬に近い。但し、足の部分は何故か蹄に似た物で覆われている。
 まるで伝承上の……古の狂気の書物に記載されているグールの如きその姿。

 対して――当然、ソロモンの魔将たちも無能ではない。
 腕を斬り跳ばすと同時に放たれた炎の氷柱(つらら)が、黒き気に覆われた右腕を一瞬にして燃やし尽くす。
 脚を斬り跳ばした瞬間、歌うように奏でられたレヴァナの月の呪文が狂気の分身を生み出すより早く、黒き呪われた脚の浄化を行う。

 しかし――
 熟練の木こりが振るう斧の音が周囲に鳴り響き、元アルマンの魔物の胸に存在する異界への入り口から闇が溢れる度に増えて行く敵の数。
 上空には未だ五山の送り火は健在。微かに……元アルマンの魔物が発する音に比べるとかなり劣るものの、それでも除夜の鐘も未だ流れて居る状態。

 どう考えても現状は不利な状況と言うしか方法がない。しかし、それでも完全に手遅れと言う訳ではない。

「厄介なヤツを呼び出しやがって!」

 口では悪態を吐きながら、それでも呪符を取り出しそれに息を吹きかけ周囲に放つ俺。
 刹那、現われる俺の姿をした剪紙鬼兵(せんしきへい)たち。その数は七。これで、残りのすべての剪紙鬼兵を投入したと言う事。

 但し、こいつらは所詮、紙の兵。魔法を使用する事が出来ない以上、単なる目くらまし。時間稼ぎ以上の役に立つとは思えない。
 俺の能力の完全コピー。飛霊を呼び出せたらもう少し何とかなるのですが、ルルド村の護衛にすべて残して来ましたから、流石に無い袖は振れない、と言う状況。

「アルマンが呼び出そうとしたテスカトリポカには色々な相が有る」

 タバサに説明しながら右腕を軽く振るう俺。
 その瞬間、地上に落ちた太陽に等しい輝きが俺の右腕の先に発生。所有者に必ず勝利をもたらせると伝説に語り継がれしケルトの至宝、聖剣クラウ・ソラス。
 放たれた剣風。いや、これは単なる剣風などではない。空間自体を歪め、離れた場所に存在する目標に対して直接ダメージを与える初歩の仙術。

 数メートルの向こうに存在していた元アルマンの魔物の小型。破片から生成されたデッドコピーが一瞬にして両断され、宙に舞う。
 しかし、これだけでは不完全。その一瞬後には周囲に存在する魔
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