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Fate/stay night -the last fencer-
第二部
魔術師たちの安寧
終わりゆく陽だまりの日常
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としちゃいけないのかって言ってたけど。
多分その誰かに会えるかって、楽しみにしてるだろ? 聖杯戦争はどうだ、同じように楽しみにしてる気持ちはあるか?」
「あ……」
ハッとしたように俯く。少しだけなら伝わっただろうか。
俺の言葉から自分のしていることの違和感を覚えてくれれば、後は自分で気づいてくれるのを待つだけなのだが。
何気なく言っているが、彼女にとっては今までの生き方に影響する大きい話だし、会ったばかりの俺の言葉で変わるかどうかも分からない。
「だから、さ。自分が本当にしたいことっていうのを考えてほしい。俺が伝えたいのはそれだけかな」
苦笑いしながら言葉を締め括る。
聖杯戦争に参加する是非、マスターを殺すことの是非については、俺にとやかく言う資格はない。
今日この場で彼女と交わした言葉が、何かを変える切っ掛けになればと願うだけだ。
「出来れば最後だとか殺し合う瞬間だとかじゃなく、こうして普通に話をしながらイリヤスフィールのことを教えてもらう方が楽しいかなって」
「────────」
何か初めて見るものを見つめるような顔を向けられる。
城に篭りっきりで人と話す機会はなかったというし、きっと彼女にこんなお説教じみた話をするような奴は居なかったはずだ。
柄にもなく語ってしまった気がして後から恥ずかしさが込み上げてきているが、間違ったことは言っていないと自負できるので堂々と見つめ返す。
「……………………」
「……………………」
長い、沈黙が長すぎる。
さすがにここまで見つめ合っていると恥ずかしさ以前に気まずさが生じてくる。
なんとかしてこの気まずさから逃げなくては、このままでは沈黙の重さだけで潰されてしまう。
無言で大判焼きをパクつく。
いやいや、現実逃避している場合ではない。
この少女はそもそも聖杯戦争の話は嫌っていたし、別の話題を探さなければ。
ただあれだけ知ったような口を効いた上に、またこちらから話しかけるのも躊躇われるし、代わりになる話題も思いつかない。
「え、っと」
「…………」
「あの……イリヤスフィールさん?」
「名前」
唐突に口を開いたと思ったら、何やら簡潔な言葉が飛び出した。
名前、とはどういうことでしょうか。
「名前?」
「長くて呼びにくいでしょ。イリヤでいいわ」
「え、あ、はい」
何故か丁寧な対応に戻ってしまう。
突然どうしたんだろうか。あっちもこの空気は持て余していたから、無理やり路線変更?
実は俺も呼びにくいなあと思っていたので、略称させてもらえるならありがたいんだけども。
「私も名前で呼ぶことにする。レエジだっけ?」
「黎慈な、黎慈」
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