第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
21.Jury:『Deep Blue』
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に」
と、不機嫌そうに唇を尖らせた顔が目の前に。そこは常盤台クォリティか、先に述べた通りに見た目なら極上の美少女。
先程見た肢体は青い果実そのものであったが、五年後もすれば、どれ程の女性となっている事だろうか。
――何て考えてる事がバレたら、今度こそ誅殺されるんだろうなぁ……。
あからさまな愛想笑いで茶を濁し、右手を振ろうとして――――忘れていた疼痛が肩まで走り抜ける。
直接、神経をなぞるような不快な痛みが指先から。腕の中心に籠る、病的な熱のようだ。
「ッ……兎に角、女の子がこんな炎天下に外回りなんて肌に良くない。巡回は早く済ませよう。そうだ、お詫びも兼ねて、今日の昼は奢るよ」
「貴方はまた……あれだけ固法先輩に叱られても、そんな不真面目な事が言えますのね」
「で、ですけどほら、白井さん。無理して倒れたりしたら、それはそれで固法先輩に叱られますし……」
表情は辛うじて、愛想笑いから変えずに。痛みをやり過ごし、代わりにヘラヘラと軽口を。それで更に黒子への心証を悪くしながら。飾利がフォローを入れる程に。
右腕を庇うように、左腕を翻して詰襟を寛げる。実に暑そうに、学ランの内に籠る熱を逃がす。
「え〜? 褐色肌、駄目〜? 私は良いと思うけどな〜?」
そんな時、後ろから掛かった声。振り向けば……道端の壁際。街路樹の木陰に陣取る、水晶玉占い師の姿。
「だってさ〜、原始、女性は太陽だったんだよ〜?」
深紅の髪に、サリーと金の装飾を身に纏う――――ニコニコと、屈託の無い笑顔の褐色の娘。
――あれ……さっき、あんなとこに人なんて居たか?
と、微かな違和感。しかし、先程は考え事に集中していたのだから見逃したのだろうと納得して。
「ところで、君達デート中〜?」
「違いますの」
「ハッハッハ、即答かぁ……先輩寂しいよ」
「暇なら、占ってかない〜? 今なら、」
不機嫌そうな表情のまま、即座にそう返した茣蓙に結座し、布で飾られた台に置かれた水晶玉を磨く娘。
「結構ですわ。この科学全盛の世に、そんな非科学的な事」
「し、白井さん……そんな頭ごなしに……」
確かに、頭ごなしである。しかし、この学園都市に於いてはそれが当然だろう。
かつて、一部の『特別な存在』に挑んだ結果。それが、この学園都市の――――『能力者開発』。人工的な超能力の、製造と精製。
「おいおい、白井ちゃん……現実は見ての通り、灰色一色の無味乾燥。つまらないもんさ。それに対して、幻想ってのは彩りだ。灰色の現実に潤いを与えてくれる、な」
それを可能とした時、人は発展と引き換えに。また一つ、夢見る事を喪ったのだ。
「だから、夢くらいはみないと。灰色に塗り潰されちまうよ」
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