第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
21.Jury:『Deep Blue』
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でもほら、嚆矢先輩にも事情くらいは――――」
「――――白井ちゃん!」
そんな扉をあっさりと、万にどころか億――――否、兆に一つほどの可能性の『誤作動』の確率を、『ラプラスの悪魔』は当然のように引き当てて。
まるで普通の引き戸のように開けて、嚆矢はそこに踏み入った。
「「――――えぇっっ!?!」」
驚いて固まった、チューブ式軟膏を持つ飾利と――――飾利に手当てを受けていたらしい、包帯を巻かれている上半身半裸の黒子の姿。それすらも、気にせず。
つかつかと歩み寄り、椅子ごと退いた飾利には目もくれずに。
「済まない、白井ちゃん! こんな大事な時に、俺ァ……俺ァ莫迦だ! もう取り返しなんてつかねぇけど、詫びならどんな事でもする! いや、させてくれ!」
「な、な、な…………!」
硬直した、胸元を包帯で覆われたのみの彼女へと。強く握れば砕けてしまいそうな程に白く華奢な、剥き出しの諸肩を両手で掴みながら猛然と謝った。先程の美偉に叱られていた中では、遂に見せていない本当の反省をしながら。
因みに、その間も黒子は呆気に取られた表情のままで目を白黒させていた。驚きに、ツインテールを逆立てたままで。白井黒子が目を白黒とは、これ如何に。
「怪我……そうだ、怪我、大丈夫なのか?!」
「おお、落ち着いてください嚆矢先輩! むしろ、怪我が悪化しちゃいますよぉ〜! って言うかあの、白井さん、まだ裸……」
漸く我に帰った飾利の声が響く。持っていた軟膏のチューブなどは、握り締められた為に全て出てしまっていたり。
「謝って済む事じゃないのは百も承知だ、いざとなれば……俺が、責任とるから!」
そして――――同じく我に帰った黒子が、俯く。髪も、ぱさりと重力に従って。
「――――あれ?」
晒け出された首筋まで羞恥に真っ赤に染める黒子の肩を掴んでいた嚆矢が――――一瞬の浮遊感の後、天地を逆転させて空中に現れて。
「――――なぁに晒してくれやがってますの〜〜〜〜っ!!」
「――――ンがッ!?!」
床面に脳天を打ち付けるのと、般若の形相の黒子に顎をスタンピングされたのは、ほぼ同時だった…………。
………………
…………
……
強烈な日差しと、それを照り返す石畳から立ち上る陽炎の波。蝉時雨の降り頻る日盛りには先程から、追い水までもが見える始末。
本日の学園都市は快晴、気温は三十度。湿度七十%。早くも夏日真っ盛りである。
「う〜ん……」
子供ははしゃぎ、大人は辟易する気候。それらの全てを無視し、難しい顔をした嚆矢は……
「うう〜ん…………」
難しい顔を『横倒しに固定した』まま、首に包帯を巻いた嚆矢は唸り続けていた。
「
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