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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
21.Jury:『Deep Blue』
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避け得ない。
 一度感電してしまえば、もう他の事など考えられないし動けない。そもそも、人の思考も行動も『電気信号』によるもの。より強い電流は、人の体を『 誤作動』させるのだ。

「優しいモンだよなァ、アイツ。少し前に十万ボルトやられたけど、キレてても殺す気は皆無だもんなァ、何せ……」

 電撃(それ)を発した『右腕』、纏わり付いていた『不純物(ブレーキオイル)』を溶かす水塊が、制御を失って路面に崩れていく。
 次いで、ティトゥスが崩れ落ちる。『たかだか三千ボルト』、この学園都市の頂点に立つ超能力者(レベル5)の第三位、最強の電撃使い(エレクトロマスター)である『超電磁砲(レールガン)』の最大出力(マックス)である十億ボルトと比べれば、大した事の無い数字だろう。

「……人を殺すだけなら、1アンペア有りゃあ良いのにな」

 だが、それでも――――『人の致死電流量』である『1アンペア』を流されたティトゥスの心臓は、既に停止していた。
 ずしゃり、と俯せに倒れた男の体。その死体を見下ろし――――止めに迷わず心臓に二発、頭に一発をガバメントから撃ち込んで。

「……チッ」

 舌打ちが響く。それは、蠢いた『男』を蹴り飛ばして――――レインコートの下の蟹や舟虫、宿借などの集合体を望んで。

「……まぁ、助かったか。これ以上は」

 明るさに見上げれば、雨の上がった雲の切れ間から。覗いている黄金の月の光の『天使の梯子(エンジェル・ラダー)』が、祝福でもするかのように降り注いでいる。
 それと同時に、何処からともなく人の気配。車の音。耳障りな、懐かしいほどの雑踏が帰ってきた。

「……俺も、帰るか」

 疲れ果てて気怠い体に鞭打つように、スクーターを起こして。辺りの惨状から目を背けて。
 面倒な事になる前に、脱兎の如く走り出した…………。
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