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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
21.Jury:『Deep Blue』
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した嚆矢の眉間に向けてトリガーを引く――――。

「そうかよ――――!」

 それより早く、嚆矢は左のガバメントより『櫟の毒礫(フィンの一撃)』を放つ。
 狙いはティトゥス――――しかし、兎を捻り潰した水の塊は、その射線上にて膜と化す。

「無駄だと言った――――この『ナアク・ティトの障壁』は、魔術だろうと超能力だろうと貫けはしない!」

 それこそは、彼の切り札。『あらゆる邪悪を遮断する』という、その障壁。海の浄化力を象徴する、『水神クタアト』の(ページ)の一枚。そこに高圧の水の塊による守りを加えた、彼にとっての最強の盾。
 それに、銃弾はあっさりと防がれた。魔術的な強化を削ぎ落とされて只の銃弾に戻ってしまっては、深海の水圧には耐えられない。投げ出され、転がった『三月躁兎』のように。

洒落(しゃら)臭ェ――――この程度で!」

 振るわれたのは、右腕。沸き立つ禍々しい奇怪にも機械に似る、確固たる密集した鎧にも群を為した剣にも、唯一生まれ持った拳にも見える追加された複合装甲を纏う、右腕の鉤爪の拳。
 あの悪夢の中より得た印象(インスピレーション)、邪悪で醜悪な『魔王の右腕(いちぶ)』。それを、現実の金属や機械で再現した『贋物の偽物(フェイク・オブ・フェイク)』。

「何――――莫迦な、魔導書(グリモワール)も無しに……まさかもう貴様の『クルーシュチャ方程式』は、『具現(エンボディ)』の階位(ステージ)に至ったと言うのか!?」

 初めて、『男』が驚愕を見せる。それは、僅かだが確かな隙。些細だが、取り返しのつかない隙だ。
 犇めく装甲が、悪意の結晶が。あらゆる邪悪を遮断する『ナアク・ティトの障壁』に触れる。

「だが、やはり無駄だ――――この俺の『ナアク・ティトの障壁(マイ・フェイバリット)』は、既に『顕在(アクチュアル)』の階位(ステージ)にある!」

 削ぎ落とされた邪悪なる神性、水塊に飲み込まれて動かす事も出来なくなる右腕。いくら『神を模した』物であろうと、それが魔術であるのなら『ナアク・ティトの障壁』は打ち消せない。
 軋み始めた、右腕の刃にして鎧。後は、捩じ切られてしまうだけ――――

「――――知り合いに『電撃使い』が居るんだけどよォ」
「何――――?」

 突然の言葉に、ティトゥスは怪訝な表情を見せた。盤で行う遊びで言うなら、既に『詰んだ(チェックメイト)』状態である男の、不敵な笑みに。
 それと、同時に――――

「ぎ――――が、ハ!?!」

 ティトゥスを、電気自動車のバッテリーから発された約三千ボルトが襲う。それは、足下の水を伝って。車のタイヤゴムを纏わせ、アースとした嚆矢には効果を成さなかったが……周囲の水を操っていたティトゥスは、直撃を
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