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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
21.Jury:『Deep Blue』
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、奴が『水』を主体とする魔導師で銃器主体の戦闘を好む事、そして……何らかの方法で、こちらの動きを読む事。魔術も、科学も通じない事。
 恐らく……この雨が、その絡繰り。奴は、どこまでかは解らないが――――雨によって、獲物の動きを先読みしているんだろう。

 その見立て通り、またもや動けばその先に銃弾がバラ撒かれる。『彼』――――ティトゥス=クロウと名乗ったその男は、雨音に紛れて近付きながら。

――待て。なんだ、この違和感は? 今は先読みされてるけど、ついさっきは、確か……!

 そこまで考えて、漸く『切欠』を見る。糸屑一本程の僅かな綻び、その『可能性』を。
 見遣る、足元の水溜まり。拡がる波紋。次いで、車。金属の塊。雨を弾く車体。そして――――懐から取り出した、『輝く捩れ双角錐(シャイニング・トラペゾヘドロン)』を嵌め込んだ懐中時計と神刻文字(ルーン)の刻まれた幸運の護符(ラビッツフット)

「……ハッ、考えるまでもねェ。しくじりゃ死ぬが、やらなくても死ぬんだ。だったら――――」

 気を取り直し、背中を車に預ける。動悸を押さえ付ける為に、息を吐く。
 確認は取った、今は、もう――――午後七時。見えはしないが、間違いはない。この雲の上には――――

「こっからは、『夜の王(オレ)』の時間(ターン)だ――――!」

 右手を、高く掲げる。『在る筈』の黄金の月に向けて。霊質(エーテル)の海に揺蕩いながら狂い笑っているであろう、狂気に溺れた虚空の彼方へと。
 右腕に満ちる、不可思議な力。もうそこに、倦怠や苦痛はない。むしろ、今までに無い程の活力を感じる。

「……出てこないのならば、こちらから行こう」

 声は互いに、雨に掻き消されて届かない。嚆矢が天に右腕を翳したのと、ティトゥスが前方に『水神クタアト』を翳したのは全く同時。
 先に動きがあったのは、ティトゥスの正面。圧縮された水の鞭が、彼の左腕の動きに合わせて音に等しい速度で振るわれ――――鋼鉄の車体を、不純物を混ぜたウォーターカッターの原理で右袈裟懸けに削り斬った。

「――――ッ!?」

 瞬間、切断された車体の後半部分が『三月躁兎(マーチ・ヘアー)』――――突撃型の機械偶像(ゴーレム)と化す。
 跳躍は速やかに。時速100キロを越える加速により、質量兵器としての破壊力は申し分なく。

「無駄だ――――」

 沸き上がるように周囲の水を集中させた巨大な水塊(スライム)に囚われた兎は、ティトゥスの左手の『水神クタアト』が閉じられると同時に、深海の如き水圧に圧壊する。
 水塊内に拡がる、漏れ出たブレーキオイルの黒。そのまま、彼は――――

「――――稚拙な陽動だ。所詮は餓鬼か!」

 右の軽機関銃を、その後ろから飛び出
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