第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
21.Jury:『Deep Blue』
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真摯に、神にでも祈るように言葉を紡いで――――コツン、と。
「チ――――!」
嚆矢が『銃口に頭を当てた』事に舌打ちし、拳銃を投げ棄てた――――正にその時、錬金術で『銃弾を暴発させられた』Auto9が砕け散る。
本来なら、即応出来るだけの距離があった。しかし、僅かな興味を抱いて猶予を与えた結果……静かに、蛞蝓の如く忍び寄る事に成功したのだ。
「――――悪ィな、ニイちゃん。良い女の頼みなら兎も角よォ」
その、一瞬の隙に振り返った嚆矢。突き付けられた左手には、ガバメント。
鉄色そのままの武骨な、飾り気の無いオールドタイプの銃を構えて――――
「野郎の頼みなンざァ、聞いてやる義理もねェンだよ――――!」
その引鉄を迷わず二度引いて、男の心臓目掛けて鉛玉を放つ。確実に殺すべく、神刻文字による『櫟《ユル》』の毒……『呪詛』を籠めて。
過たず、二発は男の胸を穿つ――――
「――――良い判断だったぞ、吸血鬼」
「なッ――――」
事はなく……虚空に波紋を刻みながら、見えない壁にめり込むように止まる。
波紋がなければ気付かない程に薄く透明な、高圧の水によって。
「この俺に――――ティトゥス=クロウに、『水神クタアト』がなければ」
レインコートの内の、彼の『魔導書』が姿を表す。雨に濡れた体が、魂に感じた寒気から震えた。
悲鳴を上げているような『人間の顔の皮』が張られた、冒涜的にも程がある装丁。漏れ出るのは病的な、暗く淀んだ潮の香り。深みに潜む、水妖の気配。
――やっぱり魔導師かよ……クソッタレ、どうする……! このままじゃ、ジリ貧で負ける!
次いで、レインコートの奥から取り出されたのは――――黒い長方形。右腕に持つ、それは――――
「機関銃――――!」
盾とした壁を踏み越え、一気に距離を稼ぐ。刹那、『LMG11』――――ケースレス銃弾を用いた、装弾数三百発を誇る軽機関銃が軽快に火を吹く。
「巫山戯ンじゃねェ、一人相手に用いるような銃器かよ!」
『盾』としたアスファルトを易々と砕いて破片を撒きながら。鉄の雨は、停めてあった車のボンネットをスライディングして弾避けとした嚆矢に追い縋る。
何らかの魔術的処置が施されているのか、『盾』は易々と貫通した銃弾も、車は貫いてこない。そして幸いな事に、この車は電気自動車なので『銃撃でガソリンが誘爆』等と言う事もない。
――どうする? あの魔導師に勝つには……何をすればいい! 対策を立てたくても、余りに情報が足りない。分かっているのは
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