第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
21.Jury:『Deep Blue』
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える。狩人の余裕そのもの、何の淀みもなく。革靴を鳴らしつつ、ゆっくりと歩き出す。
その間、嚆矢は――――裂けた左頬から滴る血を拭い、痛みに顔を顰める。おまけに、左の耳は先程から上手く機能していない。
「ッ――――クソッタレが……!」
現状分析を終えて驚愕が去れば、後は怒りが沸き上がる。その怒りのまま、懐からガバメントを抜き放つ。
その性能差たるや。投石紐と連弩ほどもあろうか。
「何だよ――――何なんだテメェ! クッ……何処の組織だ!」
偵察にしろ陽動にしろ、動いた先のアスファルトが銃弾に穿たれてしまい身動き一つ取れない。まるで、『盾』の内側で嚆矢が、どう動いているかが分かっているかのように。
更に、雨音に紛れる靴音は嚆矢には届きはしないし、先の叫びも自分の耳にすら届かない。それもまた、この『雨の結界』の厄介なところ。
対して、男は――――
「今から死ぬお前が、それを知って――――どうする?」
「――――ッ!?」
後頭部に突き付けられた、黒金の銃口。雨音に紛れて、まるで左耳が聞こえない事を庇う為に壁側に右半身を向けていたのを知っていたかのように、迷わず背後側に回り込んだ男。
「狙いは『妖蛆の秘密』なんだろ……こっちもあんなモンとは手ェ切りたいんだ、別に抵抗しねェから持ってけよ」
両手を挙げて無抵抗の意を示しつつ、先の少女が『魔導書』を狙っていた事からそう口にする。この男が『彼女』の仲間だと言う確証はなかったが。
「ああ、そうだ。俺は『愚妹』の尻拭いに来た。アイツがやり残した『仕上げ』をな」
読みは当たっていたらしい。それにより、少し興味が湧いたのか。僅かに饒舌となった男は、フードの奥のペイズリーの瞳を歪め――――
「――――お前を殺す事だよ、闇を彷徨を者?」
嗜虐に瞳を歪め、高揚した様子で告げる。どうやら、最初から交渉の余地が無いと。それだけは、はっきりした。
「……『カインの末裔』だの、『闇を彷徨う者』だの……何の話だよ、人違いだ!」
だが、その聞き慣れぬ言葉。少なくとも、『対馬 嚆矢』も『正体不明の怪物』と呼ばれていた頃でも預かり知らぬ言葉に、疑問を投げ掛けた。
「知らぬか、或いは忘れたか。まぁ、関係はない。貴様は――――この世に居るべき存在ではないんだよ」
だが、無感動。最早興味を無くしたのか、彼は――――
「目覚める事なく、星辰が揃う前に死んでくれ。頼むから、世界を壊す前に――――せめて、その死出の旅路に『深淵の大帝』の導きが在らん事を」
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