第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
21.Jury:『Deep Blue』
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に悪い事に、自宅に帰る道の中で、一番待ち時間が長い信号に引っ掛かってしまう。
「百分の一だな、ッたくよォ!」
悪態を漏らしつつ、ハンドル下の収納スペースからゴーグルを取り出す。雨の日対策の防水仕様は、ゴーグルも収納スペースも同じ。代わり、スペースには携帯と財布を突っ込んだ。
「――――ぶわ!?」
と、ゴーグルをつけた刹那、信号が青に替わり――――隣の車が、盛大に水飛沫を吹き掛けてきた。後少し遅ければ、目に入っていた事だろう。
正に踏んだり蹴ったり。少し良い事があった日だけに、終わりが悪ければ全てが悪く感じてしまう。
「クソッタレ……ありがとよ!」
その車のテールライトに向けて吐き捨て、ゴーグルを拭う。前を見て、己も発進しようとして――――
「…………」
赤に替わっている横断歩道を踏み外した位置に立つ、その男。土砂降りの雨音を引き連れたような、黒いレインコートの男を目前に望んだ。
「何だ、お前――――」
前に進めず、背後からクラクションが鳴る? 否、雨音以外はない。車も、雑踏も。誰も、何も居ない。
自分以外の存在を、辺りから一切感じられない。最早、雨に降られている不快感すらもない。感じられるのは、ただ……目の前の男。その、吐き気を催す程の存在感。
――覚えがある。この感覚は、確かに……あの時の少女と同じだ。
今なら、分かる。あの少女は『風』で、この男は――――『雨』で、結界を編み上げてやがる!
瞬時に、演算を最大に。『制空権域』の『対馬 嚆矢』から、『正体不明の怪物』へと、回帰する。
それと、全く同時に。男の右手が上がる。その手に握られた――――
「――――ではな、カインの末裔」
突き出された『Auto9』――――即ち機関拳銃『ベレッタM93R』の改造銃であり、且つロボな警官が使用していた、あの怪物拳銃。
その引鉄が、迷い無く引かれた――――!
「クッ――――!!」
耳を劈く、三点射の炸裂音。しかし、滝のような雨音に紛れて直ぐに消える。
『確率使い』により『運良く』雨で足が滑り、そのまま動いていれば脳漿を打ち撒けていただろう初弾を左の頬に掠らせながらも、脱兎の如く走りだした嚆矢を追う鉄の雨。壁際に追い詰められ、辛うじて錬金術で迫り上げた路面に『硬化』の神刻文字を刻んだ盾で防ぐ。
「流石に、露骨が過ぎたか。やはり、近接戦は苦手だ」
男は装填された全弾を撃ち尽くし、マガジンを入れ替
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