第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
21.Jury:『Deep Blue』
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上げて――――
「――――ッツ!?」
筋肉や腱、関節に骨。右手のあらゆる部位が、盛大に軋みを上げた。
――何だ、こりゃ……昨夜、寝る時までは何ともなかったのに。
まさか、昨日の魔術行使の反動か? おっさんの筋肉痛じゃあるまいし……確かに昨夜は、妙に魔術のノリが良くて右手を錬金したりしたけど。
針の筵とでも言うべきか、全体を無数の針で貫かれている感覚。間接まで、隙間なく。要するに、最悪の状態である。
左手で、直ぐ脇のペットボトルの水を掴む。途中、昨日の戦利品であるサバイバルナイフを『KM2000』として作り替えた物と――――自動式拳銃『P8』を押し退けて。
「全く……朝っぱらから気分最悪だな」
苦労しつつ汗塗れの寝間着を脱いで濡れタオルで汗を拭い、洗濯した普段着――――カッターシャツとスラックスに着替えた後、学ランをばさりと。船乗りみたく左肩に引っ掛ける。その裏ポケットには、先程のナイフと拳銃が隠匿されている。
因みに、風紀委員の業務に専念する為に新聞配達のバイトは休職扱い。エリアチーフからは、『いつでも帰っておいで。君みたいに無遅刻無欠勤、時間厳守の優秀社畜……もとい、社員候補はいないからね』との有り難い言葉も頂いている。
――これを期に辞めようかと思うくらい、目から汗が出そうになったぜ。
等と蜂蜜色の黄金瞳を押さえつつ。戸締りを確認し、階段を降りる。そして、庭には……いつも通りの、竹箒の音。
「おはようございます、撫子さん」
「あら、おはよう、嚆矢くん」
この『メゾン・ノスタルジ』の女主人。藤色の和服に割烹着と言う、夏場に有り得ない格好で涼やかに掃除をこなす、名前通りの大和撫子。
「昨日は、随分遅かったのね。風紀委員ってやっぱり忙しいのね」
「あっ……アハハ、まぁ、そうですね」
昨夜、深夜過ぎにこっそり帰って来たのにも気付かれていたようだ。
もしかしたらと『アイテム』の尾行には気を配っていたが、それが杞憂に終わった安堵から気を抜いてしまっていたらしい。
「幾ら人の為でも、余り危ない事をしては駄目よ? 貴方の御家族、お友達、それに私も。心配するんだからね」
「うっ……は、はい」
まさか、昨夜の事を知っている訳はない筈だが、おっとりと叱られてしまう。こういう噛んで含めるような叱られ方は、頭ごなしに大声を出されるよりも、義母を思う為に寧ろ心に刺さる。
「はい、よろしい。それじゃあ、気を付けていってらっしゃい」
「はい、それじゃあ、行ってきます」
殊勝に頭を下げた事が幸を奏したか、或いは時間が無い事を慮ってくれたのか。それで話を切り上げた彼女。
再度頭を
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