14:当然の代償
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短いやり取りの後、二人は武器を構えた。決闘の前準備が全て完了したのだろう。その証拠にギャラリーであるあたし達の視界にも、二人のHPバーと今も刻々と減りつつあるカウントの数字が自動的に表示されている。
「ユミルちゃん、大丈夫かな……」
なんせ相手はあのキリトである。当初は女の子が相手のこともあって、言葉とは裏腹に手を抜くのではないかと思っていたが、今のキリトの横顔はあくまで真剣な顔つきだ。かつてあたしに見せた、二本目の剣こそ出さないようだけど……いかんせん相手が華奢で小柄、さらに鎧の類も無く、心許なさ過ぎるボロボロの服のみを纏った少女である。あたしの胸からそわそわと湧き上がる心配思慮の念が後を絶たないのは仕方が無いと言ってもいいはずだ。
「んー。大丈夫よ、リズちゃん。キリト君は言わずもがなだけれど、ユミルも強いわよー?」
あたしの呟きと内心の心配とは裏腹に、隣のマーブルが壁にもたれつつ飄々と答えた。
「実際に戦ったかのような口ぶりですね……。ユミルちゃんとケンカでもしたことがあるんです?」
「ええ、一度だけね」
「ええっ?」
半ば冗談のつもりで質問したつもりだったが、まじまじと大きな首肯が返ってきた。
「随分前だけど、ユミルが突然何も言わずに何日も帰ってこなかったことがあってね。心配になって、他にお客もどうせ居ないし宿を空けて森を何日も捜索したことがあったの。で、案の定森の奥でユミルを見つけたんだけど、『もう帰らない』って一点張りされちゃって……それについ私もカッと来ちゃって、どうしても連れて帰るって激しい口論になったの。そしたらいつの間にか……武器を手に、腕での討論になってたわ……」
うふふ、と若干苦笑いの体で話す。
マーブルも以前に一瞬だけ垣間見せたけど、レベルは分からずとも彼女もかなりの実力者のはずだ。斧と戦鎚がぶつかり合う、さぞ派手なケンカが催されたのだろう。
「それで、どっちが勝ったんです?」
すると、マーブルさんはシニカルな笑みを深くして、その唇に立てた人差し指を当てた。
「ヒ・ミ・ツ♪」
「アハハハッ、そうですか。残念」
その仕草がとてもサマになっていて、つくづく女として羨ましく思う。
……あたしもいつか、この人のようなお姉さんになりたいものだ。
「さ、そろそろカウントがゼロになるわ。観ましょ? さっきまでは対戦相手のキリト君が傍に居たから、ユミルの戦い方を話さなかったけれど、今からは私が分かる限りに追々解説してあげるわね。かつて一度戦っただけの情報でよければ、だけど」
立てた指を睨みあう二人へと向け、あたしの視線を促した。
気付けばもう、カウントは残り一ケタだった。
ユミル
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